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北海道大学名誉教授の小林博博士は、その著書「がんの予防」
(岩波新書)でおもしろい事を書いている。
物事の始まりは、ABCだが、人生の終わりもABCだというの
である。つまり、Aは心筋梗塞(Heart Attack)。Bは脳血管障害
(Brain)。 Cはがん(Cancer)である。現在、日本人の10人に
6人は 、このABCのお世話になって死ぬ。いずれも生活習慣病で
ある。
では、いずれお世話になるとしたら、ABCのどれがよいだろう
か。人によってさまざまなのは当然だが、Aが良いと言う人は多い
ようだ。あまり苦しまずにあっという間に死ねるからというのが主
な理由だが、残されたものは、その日から途方に暮れてしまうし、
第一本人も身内に「ありがとう」の一言もいえない別れは、さぞ心
残りに違いない。
ではBはどうだろうか。あっという間にこの世を去る場合もある
が、寝たきりになったり、ボケる事も多い。ボケは本人は自覚がな
いからよいとしても、介護を続ける家族の苦労は大変だ。Aに比べ
て人気がないのもうなずける。
AもBもいやだとしたら残りはCである。しかし、Cを希望する人
は極端に少ない。最期まで苦痛を伴うというのが、その主な理由だ。
もっとも、最近はモルヒネの使い方が進歩し、かなり楽に死ねるよ
うになったが、必ず死ぬと告知を受けてからの精神的な苦痛は大変
なものだ。逆に「ありがとう」「さようなら」の言葉をこころおき
なく残してこの世を去ることができる。
いずれにしても、希望通りにいかないのが人生の常だ。AかBか
Cかは、その時になってみないと誰にもわからない。願わくは、天
寿を全うしてから死にたいものだが、天寿も人によってまちまちで
あり、これもよくわからない言葉だ。どこかの市でGNP二乗運動
なるものをやっているらしいが、元気で長生きをして、最期までプ
ライドを持って生きたいものだ。
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