生活習慣病はほんとに生活習慣だけが原因?


 このような方が受診されることがあります。

@60歳女性 150cm 45kg。健診でコレステロールが高いと言われた。

A65歳男性 160cm 55kg。健診で血糖が高いと言われた。

飲酒や喫煙もありません。体形はどちらかというとやせ型です。

あまり生活習慣に問題があるとは思えません。生活習慣病の中でも、特に脂質異常症や糖尿病の患者さんの場合、生活習慣にはあまり問題のない方が存外に多くいらっしゃいます。  
 今の日本では、高血圧、脂質異常症、糖尿病は生活習慣病とひとくくりにされます。そして、日本人の性でしょうか、すべて自分の生活習慣に問題があると卑屈に考え、必要以上に生活習慣改善に取り組んでおられるかたをお見掛けいたします。実は、遺伝や体質の影響のが強いために、脂質異常症や糖尿病を発症するかたがたくさんおられるのです。先に挙げた2例のような方の場合がそれにあたります。

 このような場合、これ以上の生活習慣の改善は、苦痛を伴うだけで、効果に乏しいでしょう。適切な薬物治療を受けた方が良い場合があります。一言に生活習慣病の薬物療法といっても幅が広いです。どれくらい悪いのか、患者さんの体格、年齢や性別、他疾患の有無などから、いくつかの薬物の候補が挙がります。その中から、家族背景や金銭面、生活スタイル、そして患者さんの希望などから総合的に判断して、薬物を決めていくことになります。場合によっては薬を使わない選択肢もあり得るでしょう。

薬で何でも解決できると思ってもらっては困りますが、逆に、薬はすべて悪いものと決めつける必要もないでしょう。お薬とは、それぞれの場面に応じて、上手に付き合っていけたらよいかと思います。