院内処方と院外処方

以下の文書は2023年度診療報酬に基づくものです

一昔前、院内処方で薬を処方し、薬の仕入れ値と薬価の差(薬価差益といいます)で、利ザヤを稼ぐことができた時代もあったようですが、今は、ほとんど儲かりません。その話はまた別のところで。。。

さて、今回は院内処方と院外処方についてのお話です。

当院では院内処方を推奨しています。理由は、とにかく院外処方は、患者様の自己負担額が不必要にかかりすぎるからです。

以下に、処方例を提示して説明します。
生活習慣病などで定期的に通院され、

 高血圧でアムロジピン(1錠約10円)を朝食後に

 脂質異常症でアトルバスタチン10mg(1錠約10円)を夕食後に

 胃炎でファモチジン20mg(1錠で10円)を眠前に

30日分の処方をもらうことにしましょう。薬剤は全く同じでジェネリック品です。

院内処方と院外処方とで、どれくらい値段が違うと思いますか?

下欄左が院内処方、右が院外処方です。後発医薬品使用率90%とします。これに若干の加算が入りますので、実際はもう少し高くなると思ってください。

院内処方

 

院外処方

730

再診料

730

2250

特定疾患療養管理料

2250

520

外来管理加算

520

660

特定疾患処方管理料

660

420

処方料⇔院外処方箋料

680

医院4580

小計 

医院4840

 3割1370円

3割1450円 

     

80

基本調剤料⇔調剤技術基本料

400

50

外来後発医薬品使用体制加算

⇔後発医薬品調剤体制加算

300

 

80

調剤料①(アムロジピンの分)

840

調剤料②(アトルバスタチンの分)

840

調剤料③(ファモチジンの分)

840

0

薬剤服薬管理指導料

410

300円

薬剤費 アムロジピン5mg

300円

300円

薬剤費 アトルバスタチン10mg

300

300

薬剤費 ファモチジン10mg 

300円

医院1110円

小計

薬局4530円 

 3割330円  3割1350円
     

医院 5690円

10割負担合計金額 Δ3570円

9370円

医院 1700

3割負担合計金額 Δ1070

2810


皆様はあまりこれまで、医療費の明細を見ていなかったと思います。
さて、費用の内訳を見てみましょう。上から4段は診察に関する費用です。これは院内院外ともに変わりません。さて、左列の院内処方の場合、処方料が420円です。さらに、ここから薬の部分です。基本調剤料80円、後発医薬品を使用しているので加算で50円、内服調剤料80円いただきます。薬剤費は実は安いことに驚かれるでしょう。3剤で900円にしかなりません。上記総額5690円になります。3割負担で1700円です。

さて、右列の院外調剤の場合を見ます。上の4段は同じでした。医院では、処方料ではなく処方箋料をお支払いいただきます。なぜか260円アップして、680円になります。ここまでが病院代で4840円です。

さらに、薬局に行って、薬の部分の支払いになります。院内処方では基本調剤料だった名前が調剤技術基本料に代わり、320円値上がりして400円になります。さらに、後発医薬品をたくさん使用している場合、院内処方では50円でしたが、薬局では250円負担増となり、300円高くなります。加えて、調剤料が極めて高いです。医院で調剤すると、調剤料は総額80円でした。院外処方では、飲み方の違いによって薬袋が分けられ、薬袋1つにつき、840円かかります。この3種類は朝、夕、寝る前と別の袋に入っているのでそれぞれ別途料金がかかって、840x3で2520円もの高額になるのです。薬剤費は900円で同じです。こうして、薬局で4530円かかります。医院とあわせて合計9370円となり、3割負担で2810円と院内処方に比べて1000円以上の差が出るのです。

院内処方と院外処方で、ほぼ同じことをやっているのに、院内処方のほうがはるかに安いですよね。3割負担とすると、薬局での支払い1350円のうち、薬剤費はたったの270円で、各種手数料指導料が1080円なのです。

院外処方で薬局で余計にお金を支払い、サービスを受けていることに、どれだけの価値があるでしょうか? もちろん、院外薬局のメリットもゼロではありません。稀な薬剤を使用する場合や、薬を一方化する場合などでは、院外処方にメリットがあります。しかし、一般的な薬剤を定期的に処方するだけの場合には、費用対効果を考えると、院外薬局での費用は高すぎるのではないか、と思っています。

院内処方で医院が儲けていた時代は過去のものです。現在、医院としては、院外処方箋にした方が経営上有利です。
薬剤在庫管理するのは手間でしかありません。院外調剤にして、その分の人件費を削減するほうが良いのです。また、調剤に時間がかかる時間を節約でき、医院での回転効率が良くなります。
現在、当院の方針として院内処方にしているのは、経営上は不利ではありますが、患者さんが薬局に行く手間が省け、会計が一度で済む利便性もあり、窓口での総医療負担額を減らすことができるため、患者さんのためには一番と思っているためです。

院内調剤する分、どうしても時間がかかるため待合が混雑いたしますが、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。