標準体重 いま むかし

 

 健康診断を受けると、標準体重って表示されますよね。

 何が標準なんでしょうか?

 そもそも、どうして標準体重って決まったのでしょうか?

 広く言われる標準体重は、BMI と呼ばれる体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数で、体重(kg)÷身長(m) ÷身長(m)から計算されるものです。日本肥満学会では、BMIが18.5〜25を正常体重、25を超えると肥満、18.5未満を低体重、そしてBMI 22を標準体重としています。BMI 22とは、165cmの方で60kgくらいです。その根拠は、1991年に発表された論文です(K. Tokunaga et al. Int J Obes. 1991 Jan;15(1):1-5)。

その論文では、30歳〜59歳の日本人で職域検診を受けた男女4565人を対象とした健康診断で、肺疾患、心疾患、消化器の病気、高血圧、腎疾患、肝疾患、糖尿病、貧血、脂質異常症、高尿酸血症の10項目を調べたところ、BMI 22の人々が最も異常項目が少なかったのです。そこで、BMI 22が最も健康であると位置づけて、今日に至ります。しかし、この根拠となる論文にはいろいろ問題があります。わずか5000人足らずの、しかも公務員という限定的な中年の日本人を対象としていること、もはや30年前以上昔の古い論文であること、がんや脳梗塞などは調査対象外であること、最終的な寿命との関連は不明であることなどです。

 

その後、いくつかの大規模な試験が行われ、その結果が統合解析され、論文発表されました。Sasazuki S. et al. J Epidemiol 2011; 21: 417-430

40歳以上の日本人男女およそ35万人を平均12.5年間追跡し、BMIと総死亡率を調査したものです。その結果、なんと、BMI 23〜24.9の人たちが最も死亡率が低く、肥満でもBMI 27までは死亡率は上昇しないと報告されています。BMI 30以上の肥満者で死亡率が上昇することは想像に難くありませんが、BMI 21以下の低体重の方も死亡率が上昇傾向で、BMI 19以下にあっては、明らかな死亡率の上昇が見られたのです。

 

そろそろ還暦を迎える頃からは、あまり過度のダイエットは危険です。ただ単に太ればよいというものではありませんが、痩せないようにしていくことの方が、健康長寿に繋がるような気がしております。

個人的には、還暦を迎える頃からは、BMIで24-25程度、いまの標準体重の1割増しを目標として、体重を管理していけば良いのではないかと思っています。