サケの一生LIFE OF SALMON

そ上と産卵

 秋になると沿岸の河川と北上川にサケが産卵のために帰ってきます(そ上)。海にいるときは銀色をしていた体色も、河川に入る頃には、銀色の鱗が次第に黒ずみ、タテ、ヨコに紋様ができブナ毛となり、雄は”鼻曲がり鮭”と呼ばれるように鼻も曲がってきます。

 数々の障害を乗り越え、産卵場を求めてひたすら川をのぼるサケ。天然の産卵場は冬でも結氷しないような川底から湧き水が出ている砂利地帯が選ばれます。

 これは、水温の変化が少なく、サケの卵が育つ環境に適しているからです。産卵は、秋から翌年の1月末ごろまで行われます。
 まず、群の中から意気投合したひと組の夫婦が生まれ、それから巣作りが始まります。雌が産卵床になる穴を掘り、雄は他の雄が近づくのを防ぎます。穴が掘られると、雌は数回に分けて放卵を行ない、同時に雄は放精を繰り返し、受精が行われます。産卵が終わると、後は雌の仕事です。卵を外敵から守るために穴を砂利で覆います。産卵される卵は、1尾当たり約3,000粒です。

 このような産卵行動が3~5日にわたって行われます。サケは数日間、産卵床を守っていますが、やがて力つき雄も雌も息を引き取っていきます。

ふ化から北洋への旅立ち

 水温の変化の少ない湧き水の出てるところに産卵されて卵は、砂利の中で成長し、毎日の水温をたした数値が480℃になるとふ化し、さらに480℃に相当する日数がたつと稚魚となって砂利の中から出てきます。たとえば、湧き水の水温が8℃ですと60日でふ化し、さらに60日で稚魚となるのです。巣から出た稚魚は、川の中にいる昆虫などを餌として成長します。しかし、逆に大きな魚に食べられることもあります。少しずつ成長したサケの稚魚は、春3月から5月にかけて海にくだります。

 海にくだったサケの稚魚は、1カ月ほど湾内で生活し、動物プランクトンなどを食べて、北洋へ旅立つための力を蓄えていきます。岩手県の場合は、餌の少なくなる5月に入る頃、約8~10cmになった大きな稚魚から、順々に北洋へ向かって移動を始め、水温が13℃台になる6月下旬までには、サケの稚魚全部が旅立ちます。様々な困難を乗り越えながら、母川から海へ、沿岸から北洋へ、めざすは遠くアリューシャン海域、ベーリング海。何十万年もの遠い昔から繰りひろげられてきた壮大なサケの雄雄しいスタートです。

北洋から生まれた川を目ざして

 北洋で1~5年すごしたサケは大きく成長して、生まれた川を目ざし、再び長い旅に出ます。でも、どうしてサケは間違わないで生まれた川に帰ってこれるのでしょうか。今のところ沿岸に近づいてから生まれた川の臭いでわかるという「臭覚回帰説」や、太陽の位置などを目安に帰る「太陽コンパス説」、そのほかに「地磁気説」、「海流説」等が上げられていますが、実際どうなのかはわかっていません。ただ、確実に帰ってくると言うことは事実なのです。

 北洋を回遊しながら成長し続けるサケ。そんなサケにも天敵はいます。トド、アザラシなどが容赦なく襲いかかってきます。やっとのことで、生まれた川に帰ってみると川が汚れていたり、産卵できる場所がなくなっていたりとか、サケにとっては人間の手を借りずに生きて行くには難しい時代になってきました。

《社団法人岩手県さけ・ます増殖協会「南部さけ」より引用。一部編集》

さけの回遊経路模式図(米盛、1975;上野、1998)