第99回
日時:2007年 7月21日(土) 14:00-16:00
場所:盛岡市上田公民館 第一集会室
テーマ:生命を科学するシリーズ(11)
話題:「抑制性ニューロンの可視化と解析」
白石 博久 (岩手医科大学 薬学部 生体防御学)
発生過程における神経系の形態学的な形成の大枠は遺伝子によって規定されて
いますが、その複雑なネットワークが機能的に成熟していくには、後天的に経験
される生体内外の環境からの刺激に応じた神経系の再編成が必要です。神経ネッ
トワークの成熟過程には、刺激を伝える興奮性神経(グルタミン酸作動性神経細
胞)と、その興奮を抑制する抑制性神経(GABA作動性神経細胞)が、機能的なバ
ランスを保ちながら自らの機能を調節、変換、時には排除していくことが必須だ
と考えられています。しかしながら、そのメカニズムの詳細は未だ明らかになっ
ていません。
近年モデル生物として利用されているゼブラフィッシュは、初期発生過程にお
いて体が透明で観察しやすいこと、また受精後約1週間で中枢神経系がほぼ形作
られることから、神経ネットワーク形成過程の基本的な課題を解き明かすのには
格好の材料と言えます。更に、様々な蛍光蛋白質・蛍光基質の開発や、二光子励
起顕微鏡のような個体のより深部まで観察可能なイメージング技術の発達により、
複雑なネットワークを形成する神経系の発生過程における形態および活動を、1細
胞レベルから生きた個体の中で観察・解析できるようになってきました。
私は、留学先である南カリフォルニア大学ジルカ神経遺伝学研究所(Li Zhang博士)
において、抑制性神経に特異的に発現する遺伝子のプロモーターを用いて、ゼブラ
フィッシュの脳の抑制性神経に蛍光蛋白質を発現させ可視化させることに成功しま
した。更に、視覚神経系に着目し、網膜視神経の投射先である中脳視蓋領域の抑制
性神経細胞が、視覚情報に対応してどのように応答していくのか解析しました。中
枢神経系の解析モデルとしてのゼブラフィッシュの魅力と、その克服すべき問題点
について紹介します。