第91回
日時:2005年 11月26日(土) 14:00-16:00
場所:盛岡市上田公民館 第一集会室

テーマ:人体の機能を探るシリーズ(1)

話題:「磁気共鳴法で探る人体の機能」
    吉岡 芳親 (岩手医科大学 先端医療研究センター 超高磁場MRI研究施設)

 核磁気共鳴(NMR)は、約60年前の発見以来、物理・化学を始め様々な分
野で応用されてきました。磁気と電波を使う方法のため、物質への透過性が
比較的良く、非侵襲的に人体細部までの3次元的な計測が可能となり、医学
分野では磁気共鳴画像装置(MRI)として不可欠な診断装置となっています。私
は、主に磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)として利用し、体内の代謝物質
を対象とした研究を行ってきました。本日はその医学応用を中心に話題提供
させて頂きます。
 代謝物質は様々な場面で活躍し特有な機能を果たしています。それらを磁
気共鳴法で観測できれば、非侵襲的に人体の機能・病態・診断・治療評価な
どの多彩な研究や臨床に活用できると考えられます。現段階では、非侵襲的
に観測可能な物質は限られていると言って良い程度ですが、それでも色々な
情報が得られてきております。測定方法を工夫することでようやく評価でき
るようになった物質も有ります。このような代謝物質に注目した研究を最初
にご紹介します。
 代謝物質に注目する場合には、磁気共鳴信号の帰属が重要です。私は、帰
属を行っているときに、温度計測が可能なことに気づき、磁気共鳴法を使っ
た深部温度計測も試みてきました。体温は最も身近な基本的物理量であるに
もかかわらず、生理的条件下での体内深部の温度情報は皆無に等しいのが現
状であり、精度の高い計測は非常に重要だと思われます。たとえば、鼓膜温
度と脳内温度(視床下部温度)は、センサーを埋め込んだ動物の実験を元に
して相関すると言われてはいますが、健康なヒトの脳内温度がどうなってい
るかは未解決です。また、温度は組織の活動度・血流・環境等に依存してお
り、絶えず変化していると考えられます。もし精度良く深部温度計測が可能
になれば、温度を指標として様々な情報が得られると考えられます。磁気共
鳴法を使った深部温度計測法や応用についてもご紹介させて頂きました。

  (ご質問等は右でも結構です: yyoshiok@iwate-med.ac.jp)