第90回
日時:2005年 9月10日(土) 14:00-16:00
場所:岩手大学農学部 1号館 会議室
テーマ:生命を科学するシリーズ(6)
話題:「両生類網膜再生から見えてきた再生の細胞メカニズム」
荒木 正介 (奈良女子大学・理学部・生物科学・神経発生)
http://www.nara-wu.ac.jp/rigaku/bio/develop/menu.htm
ご存じと思いますが、イモリ(有尾両生類)には非常に強い再生能力があり
ます。四肢や尾はもちろんのこと、顎、腸管の他に脳や心臓も再生します。中
でも、眼の組織、特にレンズの再生現象は、古くから発生学の研究テーマとし
て扱われ、多くの研究者が興味を持ち続けてきました。一方、イモリの網膜再
生にも長い研究の歴史があり、さまざまな研究がおこなわれてきました。しか
し、残念ながら網膜再生のしくみにはまだまだ不明の部分が多く、よくわかっ
ていません。
イモリのレンズや網膜組織が完全に失われても再生するのは、別の組織が、
分化した状態から網膜幹細胞へと変身するからで、これを分化転換とよんでい
ます。網膜再生では、色素上皮組織が網膜幹細胞に変化して、網膜発生過程を
再現します。なぜ網膜を除去するとこのようなことがおこるのか、この問題を
明らかにするためには、再生過程の詳細な観察はもちろんのこと分子や細胞レ
ベルでのアプローチが必要です。
この講演では、私達のイモリ網膜再生の研究を紹介するとともに、カエルの
網膜再生についてもお話しします。従来、カエルの網膜は再生しないと言われ
ていましたが、そうではなく、再生することがわかりました。これで網膜が再
生する動物種が2つになりました。他の動物はどうでしょうか?魚類から哺乳
類まで眺めてみると両生類のようなわけにはいきませんが、再生のための種と
なりうる細胞が存在するようです。広い意味での網膜再生のパターンは、動物
種によって異なります。これらを互いに比較するためには、細胞や分子のレベ
ルで再生過程を調べる必要があります。両生類と他の動物種を比較しながら、
脊椎動物全体の網膜再生能を眺めてみたいと思います。
両生類の網膜再生、鳥類の再生などわれわれの研究をもとに、再生の比較生
物学的なお話にしようかと考えています。