第88回
日時:2005年 2月19日(土) 14:00-15:30
場所:盛岡市上田公民館 第一集会室
テーマ:地球の自然を見つめて
話題:「データロガーを用いた新しい手法による動物学: ウミガメから
ペンギン・アザラシまで」
佐藤 克文(東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター)
● データロガーを使った研究
データロガーとは、小型の記録計のこと。近年のエレクトロニクス分野の発展によ
り、小型で記憶容量の大きなものができました。センサも多様化し、色々なパラメー
タを得られるようになってきました。画像ロガーは、釣り具としてもおもしろそうで
すし、飼っているネコに付ければ、ネコの視点で見た街並みが見えてきそうです。
私は、データロガーや電波発信機を用いて、動物の行動やそれを取り巻く環境を調
べています。対象動物は、魚・ウミガメ・ペンギン・アザラシ・クジラ等の水生動物、
ヒトを含めた陸上動物、空を飛ぶ鳥、要するにデータロガーを付けて回収さえできれ
ば、何でも良いのです。
(拡大)
加速度データロガーを車椅子に付けて、生活環境のバリアフリー度を調べたり、車
や飛行機に乗るときに自分に付けて、乗り心地を調べたりできるかもしれません。
私が関わってきたもう一つの大きなプロジェクトが Deep Sea Look、略して DSL プ
ロジェクトです。「動物が潜っていったそこにどんな世界が広がっているのかを見て
みたい」、この夢を叶えるために、小型の画像ロガーを開発してきました。双眼鏡サ
イズの第一号機を手に、私は1年半におよぶ南極越冬隊に参加しました。ウェッデルア
ザラシに装着して得られた画像から、母アザラシの後を泳いでついてくる子供の様子、
300m以上の深さに大量に分布する餌生物や、それを捕獲するアザラシの様子がわかり
ました。
● アメリカ南極基地マクマードでのエンペラーペンギン調査
アメリカサンディエゴにあるスクリップス海洋研究所の Paul Ponganis 博士と、エン
ペラーペンギン調査を行っています。2003年から始まった3年プロジェクトで、最初の
2年間は氷上に設けたキャンプ地で、囲いに放したペンギンを使って実験します。囲い
の中で氷に穴が開けてあり、ペンギン達はここから海の中へ潜っていきます。周囲数
km 内に穴がないため、ペンギン達は再びここから戻ってきます。背中に各種データ
ロガーを装着し、3次元遊泳軌跡、フリッパーの動き、血中酸素分圧などの生理データ
を取得します。
● 三貫島におけるオオミズナギドリ調査
北海道大学大学院水産科学研究科(綿貫豊助教授)および山階鳥類研究所(岡奈理子
主任研究員)との共同研究で、オオミズナギドリ調査を行っています。
2004年から始まりました。山階鳥類研究所による調査で、伊豆諸島の御蔵島で繁殖す
るオオミズナギドリが、時々1000kmも離れた三陸沖合まで索餌に訪れるということが
わかってきました。三陸沖合は良い餌場であるようです。だとしたら、釜石市沖合に
ある三貫島のオオミズナギドリにとっては、良い餌場が繁殖場の近くにあるので、良
いことずくめなのでしようか?三貫島のオオミズナギドリに電波発信機やデータロガ
ーを付けて、詳細な行動データを取得します。
● タイにおけるジュゴン調査
京都大学大学院情報学研究科(荒井修亮助教授)、Phuket Marine Biological Center
との共同研究で、ジュゴン調査を始めました。ジュゴンは一生水中で過ごすため、デ
ータロガーをいかにして装着し、どうやって回収するかが難問です。自動切り離し装
置を使って、データロガーを切り離し、その後 VHF 発信器からの電波を受信して海
面に浮かぶ装置一式を回収出来ないかと、今準備しているところです。
● 小笠原におけるアオウミガメ調査
東京大学海洋研究所海洋生命科学部門行動生態計測分野(畑瀬英男博士)、及び日本
ウミガメ協議会(小笠原海洋センター)との共同研究で、産卵終了後のアオウミガメ
の回遊行動を調べています。
人工衛星に位置情報と併せて潜水行動の情報も送ることのできる Satellite Relayed
Data Logger (SRDL)を使います。
● インドネシアにおけるオサガメ調査
北海道大学大学院水産科学研究科(田中秀二博士)、NPOエパーラスティング・ネイ
チャー(菅沼弘行代表)との共同研究で、オサガメ研究を始めました。6月に田中さ
んと菅沼さんがインドネシアに渡り、産卵期のオサガメにデータロガーを装着して
きました。無事データロガーが回収できれば、産卵期間中のオサガメの行動記録が
得られます。
http://www.icrc.ori.u-tokyo.ac.jp/kSatoHP/index.html