第86回
日時:2004年11月20日(土) 14:00-16:00
場所:盛岡市上田公民館 地階会議室

テーマ:緑を科学するシリーズ(3)

話題:「季節はずれにイチゴを作る − 発育制御による周年生産を目指して −」
    山崎 篤(東北農業研究センター 野菜花卉部 野菜花卉栽培研究室)

 イチゴ (Fragaria ananassa) は高緯度の冷涼な地帯に原産地を持つ冬休眠型
の植物であり、低温・短日条件で休眠に入り、その後ある一定量の低温に遭遇
することによって休眠が打破されて覚醒し、その後の高温長日条件で茎や葉な
どの栄養器官の生長を盛んに行います。また、低温と短日は花芽の形成を促進
する条件でもあります。通常、休眠に入るのに少し先立って花芽形成が行われ
ます。結局、秋に花芽がつくられてそれを持ったまま休眠に入り越冬し、春に
なって目が覚めて再生長を開始し、5〜6月頃それが開花するのです。つまり
5〜6月がイチゴの本来の旬なのです。普通のイチゴのことをJune−bearingと
言うのはそこから来ています。
 それが、ここ2、30年の間にイチゴが収穫出来る時期はどんどん前進化して
いき、11月には普通にスーパーの店頭で買えるようになりましたし、今や真夏
でもケーキ屋さんの店頭にはイチゴののったショートケーキやバースデーケー
キが並んでおり、クリスマスやひな祭りだけでなく一年を通じてイチゴの需要
はあるのです。
 これら季節はずれのイチゴ栽培を実現するためには、まずイチゴの花芽形成
を人為的にコントロールすること、また休眠状態を把握しそれをコントロール
することが必要です。イチゴの休眠は、種子や球根のような完全に生育を停止
する形での休眠ではないので、完全に深い眠りについている状態、半眠りの「う
とうと」状態、それと完全に目が覚めた状態、それぞれの場合でイチゴの生理
状態は異なり,花芽が形成されたり葉が生長したりする反応がかなり異なって
くるので、イチゴが今どの休眠状態にあるのかを把握する、あるいはそれをコ
ントロールすることも非常に重要です。そこで、イチゴを冷やしてやったり、
逆に温めてやったり、また苗に覆いをかぶせて短日条件にしてやったり、ある
いはわざと肥料を切らしたりなど、いろいろな操作をしてイチゴの発育(花芽
形成と休眠)を制御する技術を我々研究者が開発してきたことによって、季節
はずれのイチゴが食べられるようになったというわけです。言い換えますと、
日長を短くしてやって秋が来たよとイチゴに感じさせるとか、我々はとにかく
イチゴを如何にだますか、という研究をしているようなものです。このだまし
方の研究では日本は世界の最先端をいっているのですが、もちろん敵もさるも
のでして、上記のようにイチゴはかなり複雑な特性を持っており手強い相手で
す。
 今回はその手の込んだだまし方の一端をご紹介していただきました。