第83回

日時:2004年4月17日(土)14:00 - 16:00
場所:盛岡市上田公民館 視聴覚室

テーマ:いきものの不思議シリーズ(1)

話題:「細胞性粘菌における自家蛍光物質の局在と機能」
      内山 三郎 (岩手大学  教育学部)

 細胞性粘菌は真核生物に属する土壌微生物であり、単細胞が集合して多細
胞体を形成することから「社会性アメーバ」とも称される生物である。この
生物の分類学的位置づけは、新五界説では原生生物界の変形菌類に属し、こ
の中には他に真性粘菌が含まれる。粘菌学者・民俗学者として著名な南方熊
楠は、この真性粘菌の分類学における先駆者である。
 細胞性粘菌では、紫外線の照射により青白い自家蛍光が観察される。この
自家蛍光は、増殖期の細胞では細胞内の小胞に局在し、多細胞体を形成して
最終的に子実体となったときには胞子塊に局在している。さらに詳しく観察
すると、この蛍光物質は胞子自体には存在せず胞子外の間隙に存在しており、
細胞分化に伴って細胞内にあった蛍光物質が細胞外に放出されることが分か
る。また、この蛍光物質の正体は生物界に広く分布するプテリジンに属して
おり、粘菌細胞に特有のディクチオプテリン(細胞内)とディクチオルマジ
ン(細胞外)である。
 良く知られているプテリジンの機能は、芳香族アミノ酸の水酸化酵素の活
性を調節する補酵素成分であり、高等動物においてはドーパミン、アドレナ
リン、セロトニン、メラトニン等の生理活性物質の生合成に必須の成分であ
ることが知られている。最近では、一酸化窒素(NO)合成酵素の補酵素成分と
して、その酵素活性調節機能に関心が集まっている物質である。 
 プテリジンの機能の一つとして、細胞性粘菌においては胞子塊に局在する
プテリジンが、胞子の生き残り戦略に重要な役割を果たしているということ
が分かってきた。即ち、胞子を取り囲んで存在するプテリジンは、有害な紫
外線を吸収することにより、胞子を紫外線から防御しているのである。