日時:2003年9月13日(土) 14:00 - 16:30
場所:盛岡市中央公民館 大会議室
テーマ:−岩手の自然をみつめてシリーズ (19)−
話題:「水生生物の環境適応」
小檜山 篤志(北里大学・水産学部・水産微生物)
地球の大部分を占める水圏には数多くの生物が生息する。これら生物
は、水温、濃度による浸透圧変化、汚染物質など様々な環境ストレス
により、代謝などの生理現象が強く影響を受ける。このようななか、
生物は環境に応じてそれぞれの適応機構を獲得してきた。現在までに
多くの水生生物における環境応答機構が報告されている。その中に、
魚類の温度馴化や植物プランクトンの無性増殖・有性生殖の切り換え
が知られる。
魚類は変温動物であることから、体温が環境水温とはぼ等しくなる。
熱帯性あるいは冷水性魚類は通年、比較的安定した水温環境下に生息
することが可能であり、温度によって泳動活動を妨げられることは少
ない。だが、沼や池など閉鎖的な環境に生息するコイや金魚などは、
季節的な環境水温の変動にさらされる。しかしながら、彼らはその温
度に馴化して適したミオシン重鎖を発現することにより、遊泳能力を
維持することが可能である。
また、赤潮および貝毒原因生物で知られる渦鞭毛藻 Alexandrium
tamarense は、通常無性分裂で増殖する。ところが、環境水中の窒素源
の枯渇などの環境変化が引き金となって分裂を停止して有性生殖を行
い、シストと呼ばれる陸上植物の種子のような、細胞壁の厚い細胞を
形成して底に沈み、休眠することによって悪環境を乗り越える。しか
しながらこの機構の詳細は未だ明らかでない。
そこで、今回は上述の魚類筋肉における温度馴化の分子レベルでの調
節機構を主として説明する。さらに現在研究中の渦鞭毛藻の無性分裂
と有性生殖の切り換え機構についても紹介したい。