日時:2002年11月30日(土)14:00 - 16:30
場所:盛岡市上田公民館 視聴覚室
テーマ:緑を科学するシリーズ(2)
話題1:「ネギの仲間たち」
金澤 俊成(岩手大学教育学部)
ネギやタマネギ、ニンニクなどのユリ科ネギ属植物は、一般にAllium(アリウム)
と呼ばれる特有の香気をもつ単子葉植物である。古くから香辛性の野菜や薬用植物
として広く利用されているほか、最近では食生活の多様化や ‘血液サラサラ’の植
物に代表されるように機能性植物としても知られている。また、ユリ科ネギ属植物
には、食用や薬用以外にも観賞用として利用される多くの種類がある。
ユリ科ネギ属植物の繁殖様式には、種子繁殖(有性生殖)、栄養繁殖(無性生殖)、
種子繁殖と栄養繁殖の両者の様式をもつ種類があり、花序や葉の形態的特徴との関
連が深い。開花期には、‘ネギ坊主’と呼ばれるように、花茎の先端に小花で構成
される花序が形成されるが、珠芽の形成する種類では種子が形成されず、栄養繁殖
の器官としての重要な役割を担っている。特に、栄養繁殖には、分げつ、分球、珠
芽、不定芽などの多様な様式があり、同一の植物でも単一あるいは複数の繁殖様式
をもつ種類がある。また、ユリ科ネギ属植物の葉は、葉身と葉鞘から構成されるが、
円筒形や線形の葉身のほか、葉鞘の肥大により様々な形態を表し、器官としての特
有の形態的特徴がみられる。
ユリ科ネギ属植物の中でも食用として利用される種類を中心に、繁殖様式や器官
の形態的特徴から、植物としての特性について紹介する。
話題2:「未来のリンゴ樹形の話−カラムナータイプタイプリンゴ樹の生育特性−」
壽松木 章 (岩手大学農学部)
リンゴなど木本性の果樹は、一般樹木と同様、幹から枝が発生し、その頂芽や側
芽に花芽が形成されるが、自然形のままでは良質な果実生産が出来ないので、整枝
せん定により樹形を仕立てている。また、樹の大きさは台木の種類によって制限さ
れ、近年は、わい性台木を利用した小さな樹形での栽培(わい化栽培)が進められ
ているが、地上部の生育特性は変わりない。一方、果樹は遺伝的にヘテロであるた
め、栽培している間に、果実や樹体の発育特性が元の品種とは異なった性質を示す
変異体が発現することがある(枝変わり)。
1960年代後半、カナダで、‘McIntosh’(日本名‘旭’)から、枝がほとんど発
生しないで、幹に直接花芽が着いて果実が成る特異な樹形をした突然変異体が発見
され、‘Wijcik’(ウィジック)と名づけられた。‘Wijcik’とその後代種は、樹
の姿が細長い円筒形(カラム)を示すことからカラムナータイプ樹と呼ばれている。
‘Wijcik’の性質が優性遺伝することから、欧米や日本の研究者はこの樹を育種母
材に利用して、これをもとに新しい品種を育成しようと試みている。この樹はせん
定作業がほとんど必要なく、また機械化に適しているため未来型リンゴ樹形の育種
素材として注目を浴びているが、実用化にあたっては問題点も多い。
私たちの研究室では、植物ホルモンと果樹の生長や果実の発育・成熟との関係を
研究テーマのひとつとしており、カラムナータイプ樹の生長特性について植物ホル
モン、特にオーキシン、サイトカイニンの動態との関連から検討している。現在ま
で得られた結果では、カラムナー生育特性は、サイトカイニン剤やアンチオーキシ
ン剤処理により助長されることや、新梢中の内生オーキシンおよびサイトカイニン
量の変化から、サイトカイニンの量および分布が、カラムナー生長特性に関与して
いることを推察している。