第69回

日時:2001年7月14日(土)14:00 - 16:30
場所:盛岡市松園 国民健康年金センターもりおか 大会議室

話 題 1:「ヒメシダ植物の細胞学的自然史」
 I) ヒメシダ(Thelypteris palustris Shott)の生活史に伴っ
  てその葉緑体はどのように姿を変えるのだろう?
 II) ヒメシダの胞子の壁はどのように作られるのだろう?
小岩 弘之 (岩手生物工学研究センター)

 シダ植物の世代は胞子体(核相2n)と前葉体(核相n)それぞれがある。
成熟した胞子体の葉には成熟葉緑体が多数存在している。その葉の裏側の
表皮細胞の一部が分化し胞子嚢イニシヤル細胞が形成され胞子嚢へと発達
しやがて成熟胞子が形成される。そのヒメシダ胞子には葉緑体は見られず
アミロプラストというプラスチド(色素体)が存在する。では葉の成熟し
た葉緑体はどこで消えたのだろうか?更に成熟胞子は地面に播かれると発
芽しその細胞には葉緑体が多数観察されるようになる。その胞子細胞は分
裂を繰返し葉緑体が沢山含まれる前葉体に発達する。その前葉体には、や
がて造精器と造卵器を形成する。その精子細胞にはアミロプラストが、卵
細胞には原色素体が多数観察される。では葉緑体はいつの時期に消えて、
その代わりアミロプラストや原色素体が姿を現したのか?その精子と卵細
胞は受精・合体し胞子体へと世代を変え元に戻ることになる。
また胞子嚢内では成熟胞子が作られるが、胞子の外側にはスポロポレニ
ンを成分とした生物界の物質としては大変硬い壁が存在する。その形成に
おいて、胞子嚢内で未熟胞子細胞を取り囲むタペータム細胞が大きな役割
をしている。
 今回、シダ植物における細胞分化と色素体分化、胞子壁形成とそれに関
わるタペータム細胞の役割をヒメシダ植物の細胞学的自然史として紹介し
たい。普段何気なく道端に生えているシダ植物に対する皆さんの意識も変
るかもしれないことを期待したい。



話 題 2:「大脳皮質の縦糸と横糸」
小島 久幸 (理研・脳科学総合研究センター)

 大脳皮質は厚み(層構造)をもつ2次元にひろがったシート状の構造で
ある。縦方向には層構造があり、横方向には大きな観点では機能領野が認
められ、異なった機能が表現されている(機能局在)。微少な観点では神
経細胞の横(水平)方向に走る軸索が数mmの広がりをもち、各機能領野内
で複雑に水平方向に走行する。この水平軸索からは数百μmを隔てて縦方向、
すなわち脳表に直交するように終末軸索(シナプスをもつ)が分岐し、領
域内の異なる部位に投射している。
 層構造は新皮質といわれる部位では6層からなり、各層にある錐体細胞
は特徴的な横方向と縦方向に向かう軸索側枝をだす。そのパターンは細胞
体がどの層にあるかにより、おおよそ決定される。深層にある錐体細胞は
より多様性にとむ。このような領域内軸索側枝の分岐パターンと遠方への
主軸索の投射、また投射部位での軸索終末の形状等は相関がみられる。
 ネコ一次聴覚野において単一錐体細胞に色素を注入し、それがもつ軸索
側枝を領域内、また可能なら遠方まで追跡することにより、それらの縦方
向、横方向の分布を形態学的にしめす。また横方向に分布する領域内水平
軸索側枝の方向性が非均質であることと、同様に一次聴覚皮質に表現され
ている非均質性を比較して、水平軸索の機能について初歩的な推論を加え
たい。