日時:2000年7月1日(土)14:00 - 16:30
場所:盛岡市上田公民館視聴覚室
テーマ:緑を科学するシリーズ
話題1:「発熱植物のはなし
− ザゼンソウの熱産生機構について −」
伊藤 菊一
(岩手大学農学部附属寒冷バイオシステム研究センター生体機能開発研究分野
)
哺乳動物は、寒冷環境に曝されると、筋肉のふるえや褐色脂肪組織(BAT) に
お
ける代謝亢進により熱を産生し、体温を維持している。このうち、BAT におけ
る
代謝亢進は、ミトコンドリア内膜の脱共役タンパク質 (UCP) の働きで熱を発
生
させ、体温の低下を防いでいることが知られている。一方、植物の中にも、発
熱
により低温を回避する能力を持つものがあり、特に、早春に花を咲かせるザゼ
ン
ソウ (Symplocarpus foetidus) は、雪を解かすほどの高い発熱能力を持つ。
また、ザゼンソウの花序温度は氷点下温度を含む外気温の変動に対して20度
内
外の一定温度を保つことから、本植物には外気温に応答した発熱システムが存
在
することが予想される。我々は、ザゼンソウの発熱部位である花序で特異的に
発
現している2種類の新規UCP関連遺伝子(SfUCPa & SfUCPb) の単離に成功し、
これらの発現が低温で誘導されることを明らかにしてきた。さらに、これら遺
伝
子の出芽酵母における発現系を構築し、誘導される形質の変化について解析し
た
結果、遺伝子導入酵母における増殖は野性株に比べて抑制されることが判明し
、
その効果は SfUCPB 発現株でより顕著であることが明らかになった。また、
SfUCPA および SfUCPB 発現株におけるミトコンドリア内膜の膜電位は野性株と
比較して有意に低下していることが判明し、ザゼンソウ由来のUCP関連遺伝子
が
ミトコンドリアにおける脱共役反応に関与していることが示唆された。 一方
、
恒温植物であるザゼンソウには外気温を検知する温度センサーが存在すること
が
予想される。ザゼンソウの温度感受部位について、花序温度のモニタリングに
よ
り解析した結果についても併せて報告したい。
話題2:「植物の光合成能力向上をめざして
− クラミドモナスの低光呼吸突然変異株 −」
鈴木 健策
(東北農業試験場 地域基盤研究部 生理生態研究室)
イネなどC3植物の光合成は大気条件下では酸素により25〜50%も阻害されて
いま
す。これは主として、二酸化炭素を固定する酵素「ルビスコ」が酸素とも反応
して
しまうことに由来します(光呼吸)。もしルビスコの二酸化炭素利用効率を高
め光
呼吸をおさえることがができれば、光合成による生産性は高まるはずです。し
かし
多くの研究者の努力にも関わらず、光呼吸の小さい品種や突然変異株はこれま
で得
られていませんでした。ここでは、緑藻クラミドモナスで作出に成功した「光
呼吸
の小さな突然変異株」についてお話ししますが、これが「Green Yeast」の異
名を
とるモデル植物細胞系としてのクラミドモナスの紹介ともなれば幸いです。