第62回

日時:2000年5月27日(土)14:00 - 16:30
場所:盛岡市上田公民館第一集会室
テーマ:目で見るサイエンスー(1)

「動画で見るゼブラフィッシュの血管アトラス」
磯貝 純夫(岩手医科大学医学部解剖学)


 現在、ゼブラフィッシュDanio rerioは遺伝学および実験発生学の分野で脊 椎
動物のモデルシステムとして広く使われており、透明な初期胚は循環系の発生 過
程を追究する上で極めて有用である。主要血管の発現を規定する遺伝子の特定 に
あたって、野生種とミュータント種の血管の形態形成過程を詳細にしかも継続 的
に比較することが必要となった。この目的のため、 "生きている"ゼブラフィッ
シュ胚の血管系を三次元的に微細解剖することができる「Microangiography法 」
を開発した。
 麻酔した受精後1日胚(心臓拍動開始期)〜7日胚(卵黄吸収期)の静脈洞 あ
るいは心室からマイクロマニュピュレーターに着装したマイクロシリンジによ り
蛍光ビーズ(直径0.01μm : Molecular Probes 社)を注入して、
心臓の搏動を利用して全身に行き渡らせた。注入後約15分以内に、共焦点レ ー
ザー顕微鏡を使用して、ラベルした胚の光学的連続切片(約5μm)を得、3次 元
再構築ソフト(Metamorph:Universal Imaging社)により、各発生段階毎の血
管系の三次元イメージを構築した。
 ゼブラフィッシュの野生種およびミュータント種の受精後1〜7日胚につい て、
全身および頭部(鰓弓、脳)、胴部(腸、腎、体壁、脊髄)、尾部(体壁、脊 髄)
血管系の鮮明な三次元イメージを得た。これらのイメージをもとに、野生種に つ
いて血管系の形態形成過程を詳細に示す"ゼブラフィッシュの血管系の発生解剖
アトラス"を作成した。様々な血管系の形態異常を示すミュータント種について
も、それぞれの形態異常が発現する発生段階と部位を特定し、さらに同一個体 に
おいてその後の形成過程を追究している。
 このMicroangiography法の最大の特色は生きた胚の血管系を短時間で三次元
的に映像化できることにある。また、胚あるいは幼生に重度の障害を与えるこ と
なく、新生毛細血管の細部まで可視化できる。従って、同一個体についてその 後
の発生過程を追究することも可能である。さらに、同イメージは解析に際して 、
二次元的光学切片標本としても使用できる。一連の胚期から幼生期に至る血管 系
の三次元イメージは、今後のゼブラフィッシュを使用した血管の分化とパター ン
形成についての実験発生学、遺伝学的、比較解剖学的研究に基盤を与えるため の
ものであり、Websiteを通じての利用を前提に準備中である。