第53回

日時:1998年11月7日(土)14:00 - 16:30
場所:盛岡市上田公民館 第一集会室
テーマ:細胞の生理シリーズ(10)

話題1:「細胞はシグナルをどう伝えるか?−イノシトールリン脂質情報伝達系−」
    本間 好 (福島県立医科大学付属生体情報研究所)

 細胞外からもたらされる様々な刺激情報は、細胞表面または細胞内部に存在する受
容体によって受けとめられる。そして、それらの情報は受容体とカップルするエフェ
クターによって細胞内部に拡散できる細胞内二次情報へと変換され、標的細胞小器官
へ伝達される。イノシトールリン脂質に特異的に作用するホスホリパーゼ(PLC)も
情報変換を司るエフェクターのひとつである。本セミナーでは、PLCの受容体による
活性化メカニズムやイノシトールリン脂質の関与する細胞内情報伝達系について概説
したい。


話題2:「ウニ胚における一次間充織細胞パターン形成−ウニ胚における形作り−」
    加藤 秀生 (東北大学理学部附属浅虫臨海実験所)

 多くの細胞からできている動物の胚が受精卵から形を作り上げる仕組みについて我
々の研究室が行ってきたウニの胚をモデルとした研究によって紹介します。
 ウニ胚の形作りにおいて最初に作られる形は受精卵が細胞分裂して作る中空の軟式
野球ボールに似た胞胚です。胞胚は1層の上皮細胞から出来ていますが、中空部分に
は上皮細胞が分泌した多数の蛋白質等の形作りに大切な分子が多数含まれています。
胞胚からさらに腸・胃などの内蔵の基になる原腸ができ始める初期原腸胚までの間に、
自由に胚の中を動き回り、やがて幼生の骨格をつくる一次間充織細胞が上皮から作ら
れます。この細胞は上皮細胞にはない蛋白質を細胞表面に分泌し、上皮細胞との間の
接着を壊して、上皮組織から離れ、胚の中空部分を活発に動き周り、骨を作る直前に
原腸の周囲に環状に配列して、いわゆる一次間充織細胞パターンを作ります。一次間
充織細胞パターンは2つの細胞集合体とそれらを結ぶ細胞ケーブルから出来ており、
厳密にそれぞれの形成される場所が決まっています。
 今回は最初に我々の研究室で撮影した微速度撮影による一次間充織細胞形成、移動、
一次間充織細胞パターン形成をビデオで紹介します。次ぎに、一次間充織細胞がどの
ようにして特有の蛋白質細胞の表面に持つようになるかを一次間充織細胞分化を支配
する遺伝子の一つを強制的に大量に発現させた胚の様子、一次間充織細胞表面特有の
蛋白質の分泌の仕組みの点から紹介します。次いで一次間充織細胞の移動の仕組みを
細胞移動のコンピュータシミュレーションと比較しながら考えてみます。最後に、一
次間充織細胞接着蛋白質のウニ胚からの分離と、この蛋白質が一次間充織細胞とどの
ように作用し会っているかを分子間相互作用の点から紹介し、一次間充織細胞接着タ
ンパクの分子形態を見ながらその機能の仕方について解説します。