今回のテーマである「ドメーヌ・ベルナール・デュガ・ピィ」の当主はピエール・デュガの息子である。また、モーリス・デュガとピエール・デュガは兄弟で、従ってモーリスの子クロード・デュガはベルナールとはいとこ同士になる。
近年、いとこのクロード・デュガが超一流スターの仲間入りをし、ピノ・ノワールのファンであれば、その名声を知らない人はいない。ベルナールはあえてその有名ないとことの区別を明確にするために、ドメーヌ名の最後尾に妻の実家の苗字の「Py」をつけた。この事で、このドメーヌの当主の自分のワイン造りは変えないという、心意気を感じることができる。事実、ベルナールのワインはクロードのものとはまったくといってスタイルが違う。それはすなわち、生真面目で、エレガンスがあり、ミディアムだが、一体感のある、ソフィストケートされた味わいが真骨頂と言えるワインである。
1997
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Gevrey Chambertin Claude Dugat |
青みのある濃厚なヴァイオレット。ロースト香、につめた砂糖、ブラックチェリーのジャムなどの甘くボリュームのあるアロマ。肉厚で、甘くしなやかなフルーツは気持ちの良い酸味が下支えと見事なバランスを保っている。強い凝縮性があるが、タンニンの目は細やかで、柔らかく、今飲んでも美味しすぎるワインである。
1997
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Gevrey Chambertin Vielles Vignes Bernard Dugat-Py |
エッジは僅かに青みの残るヴァイオレット。トップノーズには特徴的なゼラニウム、ハーブ系のニュアンスがあり、強いミネラル感を伴う。マッシュしたブラックチェリー、プラムの果実香が心地よい。ミディアムであまり色気のない生真面目なフルーツ。フィニッシュは酸味バランスで、このワインは総体的に若く、closeしている。
1997
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Gevrey Chambertin Coeur du Roy V.V. Bernard Dugat−Py |
クール・デュ・ロアVVはプティ・シャペル、エヴォスレ、クール・デュ・ロアの3つの畑から造られている。このワインは前者より一層濃厚なヴァイオレットの色合いで、信じがたい程膨大な香気を放っている。トップの強いロースト香、コーヒーにブラックチェリーのジャム、ミント、クローブの涼しげなニュアンスなどがある。甘く豪勢なフルーツにはたっぷりのタンニンがよく溶け込んでおり、深みのある重厚な味わいで、格上のこのワインは、すでに今飲んで美味しい状態にある。
1994
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Gevrey Chambertin Coeur du Roy V.V. Bernard Dugat−Py |
わずかにガーネットの色合いの見えるヴァイオレット。特徴的なバルサム、湿った土のトップノーズがあり、甘いブラックチェリーのジャムの香りをふんだんに楽しめる。さらには、涼やかなメントール、品格のある香料などのニュアンスを持ち合わせている。ロングストロークな酸味バランスのフルーツはいまだ熟成しきっていない。しかしながらこの'94というVintageを考えれば、このような見事な凝縮感と素性の良さは感服せざるを得ない。
1994
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Charm Chambertin Bernard Dugat-Py |
かすかなコハク色のエッジの見えるルビーの色合い。甘やかな煮つめた黒砂糖に、コーヒーのトップノーズ、グラスの中で数分待つとオリエンタルな種々の香草、品のよいメントール、強いミネラル感を備えたプラムとチェリーのジャムのブケがあふれんばかりとなる。このワインは良質なピノ・ノワールとしてのフィネス、品格を持ち合わせている。決して濃厚ではないフルーツではあるが、ジュブレイ・シャンベルタン村のものとは思えないほどのエレガンスと洗練性が存在する。今さかんに美味しくなってきているワインである。
1990
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Charm Chambertin Bernard Dugat-Py |
コハクがかったルビーの色合い。'94のシャルムと同質の煮つめた砂糖、コーヒーなどの甘いトップノーズに続き、明確なハッカ、ミントのニュアンスがあり、さらに濃密なブラックチェリー、プラムのジャミーなブーケが続く。甘く凝縮性のあるフルーツは深遠で、複雑な底味があり、まるでピノ・ノワールのエッセンスのようである。一方、総体的にはソフィストケートされて一体感があり、肉厚なボリュームのあるスタイルよりは、研ぎ澄まされたスタイリッシュなタイプといえる。このワインは今時のスタイルとは違う古典的なピノ・ノワールの逸品である。
1994
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Gevrey Chambertin Lavaux St. Jaques Claude Dugat |
ベルナール・デュガ・ピィの94物のクール・デュ・ロアVVがいまだ完全には熟成しておらず、フィニッシュには酸味バランスの厳しさを見せている。一方、クロード・デュガのラヴォー・サン・ジャックはトップにキザミタバコ、タール、湿った土などのボルドー系の熟成香を伴い、フルーツは穏やかな酸味の肉厚なフルーツで、すでに美味しい状態に近づきつつある。同じ'94でも、ベルナールとクロードのスタイルの違いが明確にわかる。
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