The 50th Memorial Wine Forum

オテル・ド・ヤマダ
平成14年3月17日 日曜日 7:30 〜

  1. 1985 Brut Champagne Louise MG
  2. 1978 Gevrey Chambertin Petite Chapelle Rossignol Trapet
  3. 1985 Gevrey Chambertin Comb Aut Moines Philipe Lecrerc
  4. 1995 Chevalier Montrachet Les Demoiselle Louis Latour
  5. 1973 Ch. Mouton Baronne Philippe
  6. 1982 Ch. Mouton Baronne Philippe
  7. 1979 Ch. Mouton Rothchild
  8. 1980 Ch. Mouton Rothchild
  9. 1981 Ch. Mouton Rothchild
  10. 1982 Ch. Mouton Rothchild
  11. 1983 Ch. Mouton Rothchild

追加item

  • 1999 Meulsault F. Mikulski
  • 1997 Gevrey Chambertin Petite Capelle Louis Trapet
  • 1983 Clos De Vougeot Remoissenet Pere & Fils
  • 1983 Ch. Cannon
  • 1998 Lupicaia
  • 1998 Bourgogne Rouge Coche Dury



平成4年に始まったオテル・ド・ヤマダ・ワイン・フォーラムは、平成14年3月7日に50回の句切りの会を向かえた。80年代のブルゴーニュとボルドーのフラッグ・シップ的存在の伝説的な二本のワイン、1985 Gevrey Chambertin Comb Aut Moines P.Lecrercと 1982 Ch. Mouton Rothchildがこの会のメインを飾った。14名のメンバーが参加し、料理を食べながら、19本のファイン・ワインを夜が更けるまで楽しんで行った。



1985 Gevrey Chambertin Comb Aut Moines Philipe Lecrerc

これがピノ・ノワールかと思うほどの濃密なヴァイオレットの色合い。品の良いバラの花の香りに始まり、キャラクタリスティックな麝香などの動物臭を感ずる、凝縮した強いピノ・ノワールの証と言えるトップ・ノーズである。更には涼やかなクローブ、メントールを帯びたチェリーのコンフィー、プラムのジャムのアロマが飲み手を圧倒する。信じ難いほど甘く、コンセントレートされたフルーツは、複雑で広い底味と、素性の良い酸味の下支えがあり、あくまでも総体的なバランスを保っている。まるで新大陸のピノ・ノワールのように、ある種のダイナミズムを感じざるを得ない。ピノ・ノワールの持つべき要素を極限まで詰めこまれた、戦慄のブルゴーニュだ!熟成の高原部ははるか彼方である。



Ch. Mouton Rothchild
  平均樹齢42年, 75ha,  CS 80% CF10% M8% PV2%

ボルドーはメドック地区のポーイヤック村にあるプルミエール・グラン・クリュ・クラッセの中の一つである。また1855年のメドックのシャトーの格付けを変えさせた唯一のシャトーでもある。それは故フィリップ・ド・ロートシルト男爵の功績によるものと言って過言ではない。公式格付けの1級シャトーとなって、73'のピカソ・ムートンには次の言葉が記されている。
「余は一級であり、かつては二級であった。ムートンは不変なり。」
79'〜83'のムートンはどうであろうか?




1979 Ch. Mouton Rothchild
かすかにガーネットのエッジが見える濃厚なクリムゾンの色合い。僅かにヴァニリンを感ずるトップ・ノーズに、強いミネラル感と黒コショウ、セージ、コリアンダーなどのスパイシーさを伴い、更にはメドックの本流を行くブラックカラントのブケをたっぷりと堪能できる。ミディアムなフルーツのこのワインは、総体的に酸味が強く感じられ、舌に纏わりつくタンニンと僅かなフィニッシュの収斂性が気にかかる。あと5年以上は待ってみるべきなのだろう。しかしながら今までに何本か飲んだ79'ムートンのなかで、今回のワインが一番納得のゆく物であった。



1980 Ch. Mouton Rothchild
ややオレンジがかった薄めのクリムゾン。特徴的ななめし皮のトップに、品格のあるバラの香気を帯び、胡椒、クローブ、メントールなどの香料が続き鼻をくすぐる。更にはグラスの中で暫く待つと、プラムのジャムや重厚なブラックカラントのアロマをふんだんに楽しめる。タンニンがしっかりと溶け込んだ甘いフルーツは、小柄ではあるが極めてバランスが良く、しなやかでオイリーな飲み口で、今飲むのであればこのムートン!と私は確信した。しかし状態の良い物に限られる事だけは、付け加えておかなければならない。



1981 Ch.Mouton Rothchild
濃厚なクリムゾンからガーネットの色合い。トップ・ノーズに明確なヴァニリンとクレーム・ド・ブリュレを感じ、更には黒胡椒、クローブなどが濃厚なブラックカラントのブケにスパイシーさを与えている。第一印象はタンニンがたっぷりで大柄なイメージだが、味わいに奥行きがなく、フィニッシュに軽さを感じるのはヴィンテージの傷痕か?しかしこのロットはグラン・クリュ・クラッセのプライドを汚すものではない。



1982 Ch. Mouton Rothchild
光を透さないほど濃密なガーネットで、未だ熟成感を示す色合いではない。トップ・ノーズにはメドックのカベルネの証とも言えるなめし皮のニュアンスがあり、クローブ、ミントなどの涼やかな香りを伴い、ナツメグ、白コショウ、オールスパイスなどのスパイシーさを帯びたブラックカラントの厳然たるブケが膨大に立ち昇る。かつて経験のない壮大なスケールの堅固なフルーツには、甘く豪勢なタンニンが存在するが、それは決して舌に纏わりつく事のない、しなやかさを持っている。総体的には閉じてはいるものの、コンセントレートしている味わいには、信じ難いほどの複雑性と神秘性を持ち合わせている。この今世紀最大とも言えるメドックの怪物は、おそらく20年の歳月をしても、その扉を開けてはくれないだろう。



1983 Ch. Mouton Rothchild
濃密なクリムゾンからガーネットの色合いで、82'と同等の深みを持っている。クローブ、西洋スギ、ミント系のトップに始まり、全体の強いスパイス感は82'より明確な印象を持っている。極辛口の厳格なフルーツには、細やかだがたっぷりのタンニンと、素性の良い酸味の下支えがあり、このワインには数年の熟成期間によって、ボルドー通の垂涎の的となり得る素養を持ち合わせている。また83'のエキストラクトは明らかに82'より少なく、フィニッシュを比較すると83'がより単調な表情で、余韻も短い。しかしながらこのワインは、同じヴィンテージのCh.MargauxやCh.Laffite Rothchildの後塵を拝する事はあっても、Ch.LatourやCh.Haut Brionの上を行くワインと私は考えている。82'の代役にはならないが、コスト・パーフォーマンスを考えれば、持つべきワインであろう。



 
 
Copyright 2001, Masao Yamada
All Rights Reserved.