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2001 Farewell Party
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2001年のオテル・ド・ヤマダのfarewell partyで待望久しいCh.Lafleurがメインを飾った。ポムロールの至宝と呼ばれるこのワインは、Ch.Petrusと共に世界のワイン愛好家から称賛の的となっている。更にそのヴィンテージによっては神秘性と複雑性においてCh.Petrusを凌駕する事もありうる。そのブケの中に存在するエキゾティックなアジアの香料、すなわち甘草、クローブ、ミント、白檀、コリアンダー、セージなどはSt.EmilionのCh.Cheval Blancのブケに見出す事ができる。それはCavernet Francからの香りの要素と考えるべきであろう。1985年からテレーズとマリーのロバン姉妹に代わって、姪のシルヴィーと甥のジャック・ギノドーがシャトーの主導権を握っている。彼らは1987年には収穫の全部を格下にまわしPensees De Lafleurと言うセカンド・ワインに着手した。このシャトーの4haの畑には、50:50でメルローとカベルネ・フランが植えられており、ここから生産されるCh.Lafleurは年間1000ケースで、Pensees De Lafleurにいたっては年間250ケースに満たないと言われている。
* 92'95'97' Pensees de Lafleur いずれもセコンド・ワインとは思えないほどの深遠で複雑なブケを持ち、凝縮感のある味わいが印象的である。しかしその値段も並のグラン・クリュの上を行き、当然気軽には飲む事ができないワインである。値段の高さは年産3,000本と言う希少性も一つの要因となっている。95年は特に濃厚な色合いとコンセントレーションで際立っており、良質なポムロールが持ちうる、スパイス感たっぷりのブケと、途方もない黒系フルーツのジャムの味わいを存分に楽しむ事が出きる。97年はこのヴィンテージにしては驚くほどしなやかなタンニンと、豊富な酸味で下支えされたバランスのとれたミディアムなフルーツが魅力的なワインであるが、気の遠くなりそうな値段設定である。92年は今まさに飲みごろの入り口にさしかかったところである。西洋スギ、ミント、クローブなどの香料、チェリーのコンフィー、プラムのジャムなどのブケは心地よいが、その味わいにはくどさがあり、高アルコールでフルーツにスケール感がないのはヴィンテージの傷跡であろうか? *92' Ch. Lafleur 92年のパンセ・ド・ラフルールより数段上の香気を帯びており、味わいには強い凝縮性がある。しかしながら堅固なタンニンと若いフルーツは、舌に纏わりつくような濃密な味わいとは一体感がなく、よく溶け込んでいない印象である。少なくとも5年以上の熟成期間が必要だと思われる。 * 93' Ch. Lafleur 92年よりワインとしてのすばらしい品格を持ち合わせている。トップのヴァニリン、クレーム・ド・ブリュレに微かなミント、クローブがあり、スミレの花のニュアンスと共にブラック・チェリーの砂糖漬けのアロマが立ち昇る。重厚な深みのあるフルーツで、タンニンはしなやかであるが、華燭的な底味は未だに強く刺激的である。93年の本当の姿を楽しむには5〜10年の熟成期間が必要と思われる。 * 94' Ch. Lafleur 甘く濃密なフルーツと壮麗な酸味を持ち合わせた、スケール感のある、良質なポムロールの原点に存在すると思われるラフルールである。未だに青みの見える色合いで、93'と共通するスパイス感と、クローブ、ミント系の清涼感がブラック・チェリーの甘やかな香気を包み込んでいる。この年に関しては、複雑なブケとその神秘性においてペトリュースの上を行くワインであろう。 * 84' Ch. Lafleur このワインは84'と言うポムロールでは極めて難しいヴィンテージでありながら、品格を落とすことなく見事に昇華し、熟成の高原部に達したところである。本日の5本のラフルールの中で、今美味しく飲める唯一のワインと言って過言ではない。全体がオレンジがかったガーネットの色調で、そのブケにはクローブ、ミント、シナモンスティック、甘草、ナツメグなどの様々なアジアの香料を含み、その土地のテロアールとも言える強いミネラル感と鉄分を感じる。しなやかで甘いアプリコット・リキュールのようなフルーツには、エレガンスがあり、目の細かいシルクのような舌触りである。このワインはこのヴィンテージでは最高の、熟成したポムロールの完成品と言えるであろう。 * 86' Ch. Lafleur 熟成し切ったとは言えないまでも、86'のラフルールが今飲める状態か?そうでないか?の問いについては様々な意見があると思われる。しかし私は86'をこの会で開けたことに関して決して後悔はしていない。美しいクリムゾン・レッドからガーネットの色合いで、生々しいトリュフの衝撃的なトップノーズに、白コショウ、ナツメグ、ミントなどの香料は鼻をくすぐり、思わずくしゃみがでそうなほどである。チェリーのコンフィーとカシスのアロマには崇高とも言える品格が備わっており、決してオーバーデコレーションではない。ポムロールの見本とも言える甘く濃密なフルーツだが、極めて繊細で絶妙のバランスを保っており、豪勢でかつしなやかなタンニンと、目立たないがたっぷりの酸味が存在し熟成の高原部は途方もなく長いのであろう。絶対手放したくないワインの一つである。私はこのワインのために10年待つ勇気を持ち合わせているつもりである。 |
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