The 46th Wine Forum

The 17th Club Tasting ( Open Tasting )
特集  我が心のRichebourg
オテル・ド・ヤマダ
平成 13年11月25日(日) 8:00〜

  1. NV Krug Grand Cuvee
  2. 1996 Richebourg Liger Belair
  3. 1995 Richebourg Anne Gros
  4. 1994 Richebourg Jean Gros
  5. 1993 Richebourg Gros Frere & Soaer
  6. 1989 Richebourg Jean Grivot
  7. 1995 Richebourg D.R.C.
  8. 1994 Richebourg D.R.C.
  9. 1993 Richebourg D.R.C.
  10. 1986 Richebourg D.R.C.
  11. 1976 Richebourg D.R.C.

追加item

  • 1994 Cavernet Sauvignon Reserve Fetzer
  • 1997 Barbaresco Vigneto Starderi La Spinetta
  • 1999 Tarius Pisoni Vineyard
  • 1997 Perago Marche Rosso
  • 1997 La Chapelle De Ausone
  • 1989 Ch. Pichon Laland



Richebourgはある意味でのブルゴーニュの本質、つまりはじけるような果実味、瑞々しさ、そして内包する重量感においてはピノ・ノワールの最高位に登りつめるであろう。その多様なブケは特有のスパイス感、エキゾティックな香料、テロアールを表わす土、ミネラル風味、そして品格のある花、赤いフルーツなどで構成されている。またその味わいはピノ・ノワール随一の力感あふれる果実味を持つが、一方では精妙なバランスを保ち、余韻も信じ難いほど延延と続く。その意味では、同じVosne Romanee村のグラン・クリュであるRomanee St Vivenの対局をなすワインである。 Richebourgの畑は1936年9月の特級格付の際にそれまでの5.0518haから8.0345haへと公式拡張された。これはレ・ヴァロアーユを取り込んだからであるが、その畑はオー・ブリュレとクロ・パラントゥーとに挟まれている。今回はかつてのLa Tarcheのヴィニュロンであるリジェ・ベレール、3つのグロ・ファミリー、ギイ・アカッドの影響下のジャン・グリヴォー、そして5ヴィンテージのD.R.C.の合わせて10銘柄のRichebourgのオープン・テースティングを開催した。

* Nuit St Georgeを本拠地とするネゴシアン・エルブールであるリジェ・ベレールは、かつてあのLa Tarcheを所有するヴィニュロンであった。1996年物のRichebourgはリジェ・ベレールのドメーヌ元詰の物である。そのワインはわずかに青みの残る美しい濃厚なルビー色をしており、スパイシーなトップ・ノーズの後には特徴的なコリアンダー、セージ、プロヴァンスのハーブなどを感ずる。グラスの中で暫くすると、バラの花束、甘いチェリーのコンフィー、プラムのジャムなどのノーブルなフレーヴァーが立ち昇る。リキュールのように強い濃密なフルーツであるが、壮麗な酸味が絶妙なバランスを保ち、若いワインにもかかわらず美味しいピノ・ノワールに仕上がっている。



<Gros一族とドメーヌの関係>
ジャン・グロの長男のミッシェル・グロは1995年までドメーヌ・ジャン・グロとしてRichebourgを造っていた。しかしジャン・グロの引退に伴う相続遺産としてRichebourgの全てを妹のアンヌ・フランソワーズに譲った。アンヌ・フランソワーズはポマール村のドメーヌ・パランに嫁ついで、ドメーヌA.F.グロとして現在もRichebourgの生産者となっている。ジャン・グロの弟のフランソワ・グロの娘はドメーヌ・アン・グロとして0.6haのRichebourgを所有し、ミッシェル・グロの弟であるベルナール・グロは叔父、叔母のドメーヌ・グロ・フレーレ・スールを継承し、0.69haのRichebourgを所有している。


* ドメーヌ・アン・グロのRichebourg(0.6ha)の1995年物は、アン・グロが父フランソワ・グロから正式継承後の第一作となる。その色合いは本日一番の濃厚なルビー色をしており、出世作に掛けるアン・グロの力の入れようが伺われる。微かなハーブとバラの花の香料のトップ・ノーズに強いミネラルとミントのニュアンスがあり、グラスをステアーするとプラムのジャムとラズベリーの砂糖漬けのアロマであふれんばかりとなる。ピノ・ノワールとは思えないほどの重量級でフルボディの味わいで、豪勢なフルーツには豊富なタンニンが存在する。しかし甘くエキストラクトが濃密でフィニッシュは思いの他なめらかで、収斂性を感じる事はない。10年後が楽しみな巨大なRichebourgである。

* ドメーヌ・ジャン・グロのMonopoleであるVosne Romanee Clos De Rearはあまりに有名である。またRichebourgは95年までこのドメーヌの宝とも言える畑であった。しかし今は娘のアン・フランソワーズが相続しA・F・グロのRichebourgとして世にでている。私見ではあるが、もう一度ミッシェル・グロのRichebourgを味わってみたいと思う。そう感じているのは私だけであろうか?  ドメーヌ・ジャン・グロのワインは一貫して生真面目な、ストロークの長い、精緻なピノ・ノワールの見本のようなワインで、94年物のRichebourgもその造りを踏襲している。このワインは94年らしく小さくよくひきしまったフルーツで、タンニンも柔らかくRichebourgとしてはエレガントなスタイルと言えるであろう。しかしながらそのブケには品格があり、アジアの香料やコーヒーリキュールに始まり、涼しげなミント、チェリーのコンフィーやプラムのジャムなどの贅沢な香気に包まれている。このRichebourgは熟成の入り口に辿り着いたピノ・ノワールが持つべき複雑性とある種の色気を持ち合わせている。

* 93年物のグロ・フレーレ・エ・スールのRichebourgは濃密なルビーからクリムゾンで未だにエッジには青みが残っている。一瞬我を忘れて陶然とするような香り高いブケを持ち、総体的な味わいは新大陸産とも思える陽気さで、親しみやすいがスケールの大きなピノ・ノワールである。カカオ、コーヒーのトップ・ノーズにかすかなミント、コリアンダーが続き、甘いチェリーやプラムのジャムのような香気は他のピノ・ノワールを圧倒する。また豊満で肥えた果実味であるが、素性のよい酸味が全体のバランスを保ち、私はこのRichebourgにすばらしい将来性を感じる。もう1、2本所有しておきたいRichebourgである。

* 1989年物のドメーヌ・ジャン・グリヴォーのRichebourgは、当主エチエンヌ・グ リヴォーがギィ・アカッドをコンサルタントとして招聘し、長期クールマセラシオン の技術を用いている時期のものである。この時期のグリヴォーのワインは世界のワイ ン・ジャーナリズムの矢面に立たされていた。しかしこの0.3haのRichebourgの 畑から生産された89年物は今見事に熟成し、みずみずしい果実味の甘く優雅でしな やかなグラン・クリュのピノ・ノワールの見本のような逸品となった。極めてエキゾ ティックなトップには涼しげなミント、クローブがあり、熟成したピノ・ノワールに 求めて止まない官能的なアジアの香料が続く。鮮明なラズベリーのジャムとチェリー のコンフィーのアロマは、甘いリキュールのような凝縮性のあるフルーツと一体感を 持ち、生き生きとした風味のRichebourgらしさを演出している。しかしながら総体的 には見事なフィネスを持ったピノ・ノワールと言えるが、絶品のRichebourgが時折 持ち合わせるソヴァージュがない。このワインにいわゆるテロアールより造り手のス タイルを感じると言うのは言いすぎであろうか?



ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティは3.5haのRichebourgの畑からこの世の物とは思えない、ブルゴーニュのピノ・ノワールの究極の姿を表現している。その官能的で華やいだ香り、こってりとして甘い果実味、延延と続く余韻、そして長熟性においては同社のロマネ・コンティやラ・ターシェを凌ぐ場合もありうる。

* 1995年物のD.R.C.のRichebourgは未だ青みの残るルビーからクリムゾンで 濃厚なエキストラクトによるグラスの涙が見事である。品格のある花の香りにミント、 クローブのニュアンスを伴い、石やじゃりのようなミネラル感が続く。良年のRicebourg特有の強烈なスパイス感とオリエンタルな香気は、良質なラズベリーとプラムのアロマを包みこんでいる。戦慄を覚えるような濃縮した果実味。しかしフルーツの甘味と若くして複雑性を持ったエキストラクトが壮麗な酸味と拮抗し、今でもおいしく飲める。壮大なスケールの豪勢なピノ・ノワール。93'がなければ本日一番のRichebourgと言えるであろう。   

* 1994年物のD.R.C.のRichebourgの色合いはほぼ95'に近いクリムゾンをして いる。しかし香りは極めて控えめで、微かなコーヒーリキュールのトップにミントのニュアンスがあり、甘ったるいフルーツキャンディー、ラズベリーのジャムのブケが立ち昇る。他のRichebourgを制するすごみのある果実味を持ち合わせているが、総体的に酸味とタンニンのバランスが強く後味にわずかな収斂性を感じる。このRichebourgは5年の封印によってピノ・ノワールの究極のフィネスを取り戻せるのであろうか?

* 1993年物のD.R.C.のRichebourgはワインとしての品格、将来性、完成度、 などにおいて本日一番のRichebourgと言える。僅かに赤みの見えるクリムゾンの色合いには熟成の兆しが見えている。その香りには強いコンセントレーションがあり、 95'には未だ見られない官能性、複雑性、エキゾティックなニュアンスが存在する。 コーヒー、煮詰めた砂糖のトップにアジアの熱帯雨林を思わせる湿った土、クローブ、ミント、マッシュしたラズベリー、プラムのジャム、そして強いミネラルなどがグラスの中で時間とともに変化をし続ける。ひきしまった辛口の果実味であるが、味わいには信じ難いほど奥行きがあり、ボディーを支えるタンニンはしなやかでなおかつ目がこまやかである。余韻もすばらしくフィニッシュには霊妙とも言える見事な品性を持ったもどり香がワインの完成度を仕上げてくれる.

* 琥珀がかった濃密なルビー色をしている86年物のD.R.C.のRichebourgは完全に熟成した外観を呈している。トップにコーヒーリキュール、カラメルの香りが強く、グラスの中でしばらく待つと魅惑的な宝石をちりばめたようなアジアの香料、スパイスのオンパレードとなる。しかしながら果実味には未だたっぷりのタンニンと刺激的な酸味を伴いしっかりとした構造をしている。おそらく5年の熟成期間が精緻なRichebourgの完成に導いてくれるであろう。フィニッシュにはマンダリンオレンジのリキュールのような凝縮性がある。

* 76年物のD.R.C.のRichebourgは今や熟成の高原部をひたすら走り抜けているところだ。琥珀色に近い美しいルビー色をしている。そのブケはカカオ、コーヒーなどのトップノーズに微かなミント、クローブ、ナツメグ、シナモンスティック、や枯淡の域とも言えるプラムのドライフルーツでいっぱいになる。熟成しきったしなやかなフルーツはタンニンも完全に溶け、しつこく舌に纏わりつくことはない。リキュ−ルのように甘く壮麗な酸味と共に一体となり、あたかもフォーティファイド・ワインのようなバランスを保っている。これもすばらしいが、やはり私としては精気あふれる、そしてはじけるようなRichebourgの姿に傾注してしまうようだ。


 
 
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