The 45th Wine Forum

オテル・ド・ヤマダ
平成13年11月11日(日) 7:30〜

  1. 1993 Chablis Butteaux J.M.Raveneau
  2. 1993 Chablis Valmur J.M.Raveneau
  3. 1981 Gevrey Chambertin V.V. Christian Seraphin
  4. 1984 Gevrey Chambertin V.V. Christian Seraphin
  5. 1986 Gevrey Chambertin V.V. Christian Seraphin
  6. 1987 Gevrey Chambertin Les Cazetier Christian Seraphin
  7. 1981 Ch. Grand Puy Lacoste
  8. 1970 Ch. Grand Puy Lacoste
  9. 1966 Ch. Grand Puy Lacoste
  10. 1978 Ch. Latour
  11. 1966 Ch. Latour
  12. 1981 Ch. Climan

追加item

  • 1994 Cavernet Sauvignon Reserve Fetzer
  • 1998 Dulcamara I Giusti & Zanza
  • 1973 Cavernet Sauvignon Robert Mondavi
  • 1986 Gevrey Chambertin Maison Leroy
  • 1997 Taurasi San Gregolio

料理

   やまいもの昆布締め、ホタテのタルタル
鮭の西京漬けなどの付け出し
ササゲ豆の煮込みミネストローネ風
和風ロール・キャベツ
ちらし寿司



私はJ.M.RaveneauがChablis地区の最高のDomaineであると確信している。その香りには他の追随を許さない品格があり、味わいは奥深く、そして底味が広く、又Chablis特有のミネラル感とクリスピーな表情を見せてくれる。Raveneauと言えば83年物のButteauxを思い出すが、そのワインは妖しく艶やかな複雑性を持ち、蜂蜜の様に濃厚で甘く、真さしく貴腐化とも言える状態であった。後にも先にもそのようなChablisはそれが最初で最後であった。


※ J.M.Raveneauの93年物のButteauxはうすいイエローで、グラスに鼻を近づけると品格のある白い花のトップ・ノーズに、甘い蜂蜜、黄桃、サンザシの香りがふんだんに楽しめる。味わいは辛口に仕あっがており、ミネラル感が強く、他のCablisを圧倒するボリューム感がある。フィニッシュには未熟の証明であるかすかなにがみを残す。

※ J.M.Raveneauの93年物のValmurはButteauxよりわずかに濃密なイエローで、蜂蜜の香りにマンゴー、黄桃などのアロマが心地よい。厚みのある極辛口のフルーツで、シャルドネの油のような濃厚なエキストラクトが前面に張り出し、引き締まった酸がその中に隠されている。総体的にはクローズしている印象で、少なくても5年は待ちたい。今飲むのであればButteauxの方が、おいしく仕上がっている。

 94年物や96年物のCharm Chambertinを飲むまでは、Christian Seraphinを Gevrey Chambertinの単なる並みの造り手だと考えていた。 しかし私は今に至って、 96年物のCharmはGevreyらしい骨組と、たっぷりのフルーツ、そしてスパイシーさ を持ち、10年の熟成期間によって、見事に複雑性を増し、豪勢なタンニンと果実味が 融合する典雅なピノ・ノアールに昇華することを確信している。Gevrey Chambertin VVは平均樹齢45年の古木から出来るいわゆるVillage物であるが、80年代の三つの ヴィンテージはそれぞれが複雑で多彩なニュアンスを持った飲みごろのピノ・ノアール に仕上がっている。 又、プリュミエール・クリュのCazetier はClos St. Jaquesと Comb Aut Moinesに挟まれた地所である。 そのヴィンテージによってはCharm Chambertinより凝縮度とフルーツの重量感で優る場合も考えられる。

※ Seraphinの81年物のVVは、かすかにオレンジがかったルビー色で、トップノーズに  明確なキザミタバコと湿った土のブケが存在する。グラスをステアーすると涼しげなミント、プロバンスのハーブ、オリエンタルなスパイス、プラムのジャム等のようなブケが次々と現れてくる。バランスはよいがミディアムなフルーツで、スタイリッシュに引き締まっており、今が飲みごろの熟成感の強いピノ・ノアールである。

※ Seraphinの84年物のVVは一番色合いが薄く、オレンジに近いルビー色をしている。 ちょっと気になるゼラニュウム、ハーブなどのトップノーズの後に微かなミント、シナ モン、プラムのドライフルーツ等のブケが続く。ライトボディーで刺激的な酸があり、 完全に熟成しきっている。5年前に飲みきるべき物だったのか?

※ ほんのりとオレンジがかった濃密なルビー色の86年物のVVは、気持ちの良いアーモン ド、シナモンスティック、白胡椒、クローブ等多種多彩な香気に満ち溢れている。グラスの中で待つと微かなトリュフ、スー・ボア、プラムのジャムの妖しげなブケをふんだんに楽しむ事が出来る。濃密で豊満なフルーツには、微かなタンニンと穏やかな酸があり、このワインの将来性を十分に窺い知る事ができる。86年物が本日一番のVVであった。

※ Seraphinの87年物のCazetierは、濃密なルビーからクリムゾンレッドに照り輝いて  いる。わずかなキザミタバコに土の香り、スー・ボアを感じ、いかにも熟成の入り口に辿り着いたGevrey Chambertinらしいブケである。グラスをステアーすると、甘草 、コーヒー、プラムのジャム等の豪勢なブケが立ち上る。心地よい甘さとしなやかでバランスの良い果実味で、わずかにタンニンを舌に感ずるが、今飲んでも十分に楽しめるワインである。これだけの87年物のピノノアールは、そう簡単には見つけられないであろう。

Ch.Grand Puy Lacoste CS 70% ML25% CF5%
Grand Puy Lacosteはその品質を考えると過少評価されており、価格も比較的控えめなワインである。地図上ではジロンド河から遠く離れた『バージュの丘』にありCh.Lynch MoussasとCh.Lynch Bageとの間に位置している。Bordeauxきってのグルメとして有名だった旧オーナーのレイモン・デュパン(故人)は、1978年にCh.Ducru Beaucaillouのオーナーであるジャン・ユジェンヌ・ボリーにこのシャトーを売り渡した。そしてボリー氏は息子のフランソワ・クザヴィエ・ボリーをこのシャトーの責任者に据えた。Grand Puy Lacosteは力強いミディアムからフルボディのワインで、カシスやブラックカラント などの途方もない芳香を帯びた本格的なPouillacの見本となるべきワインである。

※81年物Grand Puy Lacosteは美しいガーネット色に輝いている。微かな西洋スギの の香りにミント、クローブ、黒胡椒、などが続き、Pouillac らしいブラックカラントと プラムのジャムのアロマが立ち昇る。はじめスリムで小柄なイメージのフルーツで、切 れあがった酸が舌を刺激するが、グラスの中で時間と共にぐんぐんとボリューム感が出 てくる。最後は81年物とは思えないほどの堅固で生真面目なPouillacとなる。この ワインは今からでも気軽に楽しめる、コストパーフォーマンスのよいおすすめのBordeauxである。

※ 70年物のGrand Puyはその状態についてのコメントが分かれる所である。私はもう少し良好なロットであれば、本格的なPouillacの巨大な古酒を楽しむことが出来ただろうと考えている。より濃密なブラウンがかったガーネットで、麝香のような動物系のトップノーズに、キザミタバコ、枯れ葉、シャンピニオンなどの熟成香があり、そしてコーヒー、プラムのドライフルーツなどが続く。リキュールのように甘く強い味わいの中に、マンダリン・オレンジの苦味と刺激的な酸味が存在する。複雑で濃厚なPouillacらしい古酒ではあるが、このワインはわずかにバランスを欠いたものと考えるのが妥当であろう。

※ 66年物のGrand Puyはエッジがブラウンがかったガーネット色に輝いている。白檀、シダー、クローブなどの品格のあるトップノーズはPouillacの神髄の様で、グラスからあふれ出るその香りは、飲み手の気持ちを神妙でシリアスな世界にいざなう。グラスをステアーすると、西洋スグリ、プラムのジャム、コーヒーリキュールなどの精妙な香りで頭がくらくらするほどである。しなやかでよく熟成したフルーツとブルゴーニュのような酸が大変バランスよく、またフィニッシュも穏やかで余韻が長く、静謐でマチュアーなPouillac の手本となるべきワインである。わずかに感じる後味の苦味が66年の証明であろうか?

Ch.Latour CS 80% ML15% CF5%
Ch.LatourがPouillacをいやBordeauxを代表する頑強な、鎧を纏ったかのような、ヴァン・ド・ガルドのワインとして知られている事は説明するまでもない。しかしシャトーの位置はCh.Pichon LalandeとCh.Leoville Las Casとの間に挟まれている事はあまり知られていない。この二つのシャトーとは全くスタイルを異にするCh.Latourは、力強い凝縮性と骨格の太いタンニンのフルーツを持ち、熟成する事によって壮大なスケールの深遠な味わいと男性的な香気を帯びたPouillacの典型と言えるワインである。

※ 巨大な鎧かぶとを纏った古武士のような重量級のLatourを想像している者にとっては、78年物のLatourは満足できる代物ではないかもしれない。しかしながら照りの強い濃厚なガーネット色の78年物のLatourは、鉄分、ミネラルを含んだ甘草、クローブ、黒胡椒のトップノーズに、白檀、シナモン、よく熟れたブラックカラントなどの本格的なPouillacの熟成香をふんだんに楽しむ事ができる。ミディアム・ボディーで甘く濃密なエキストラクトを持っており、しなやかなタンニンとそれを支えるレースのような酸を持っている。もしPouillacらしいブケがなければ、骨格の太い豪勢な造り手のGevrey Chambertin産の古酒のような味わいである。

Ch. Latourにとって66年は世紀のヴィンテージと言える。35年の歳月を経て、尚赤銅色のふちどりが見えるものの、堅固なPouillacらしいガーネットの色合いを保っている。男性的なニュアンスを持ったコンセントレーションの強いブケは、黒砂糖、コーヒーリキュールのトップノーズから始まる。グラスを回すとクローブ、黒胡椒、様々なアジアの香料が立ち昇り、微かなスー・ボアと煮詰めたプラム、ブラックカラントなどの本格的なPouillacのブケがあふれんばかりとなる。驚くほど甘くしなやかなタンニンは、たっぷりのエキストラクトを持つゴージャスなフルーツと穏やかなバランスを保っている。しかしながら総体的には未だ全てが溶け込んでおらず、壮大なスケールの豪奢なLatourに成熟するにはあと10年の歳月が必要であろう。


 
 
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