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The 44th Wine Fourm
The 16th club Tasting (Open Tasting)
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"シャンボール・ミュジニー"と言う コート・ド・ニュイの村の名前ほど、熱狂的なピノ・ノワールファンの心を動かす名前もないであろう。それは優雅であり、味わい深く、高い品格があり、もっぱらワインのスケールの 大きさで他を圧倒するもとは一線を画するワインである。今回はオープニングのクリュッグのグラン・キュベに始まり、"シャンボール・ミュジニー"のヴィンラージュを一銘柄、プルミエークリュを3銘柄、グランクリュの"ミュジニー"を6銘柄のテースティングを行なった。 |
※ デュジャックの97年物のシャンボール・ミュジニーは薄いほのかなオレンジの見えるルビーで、スミレの花の香水の様なトップ・ノーズと、みずみずしいラズベリーとプラムのジャムのアロマをふんだんに楽しめる。ヴィラージュ物とは思えない程の底味が広く、精妙な味わいで、その他のニュアンスを明確に投影している。 ※ヴォギュエの97年物のプルミエ・クリュは グラン・クリュ"ミュジニー"の格落ちのブドウが中心なだけに、甘やかなノーブルなブケと、めりはりのきいた果実味、ボリューム感のあるフィニッシュはグランクリュの風格とエレガンスを持ち合わせている。しかし未だ若さを残し、今後5年の成熟期間が必要と思われる。 ※若いロベール・グロフィエのワインにありがちな緑茶、ハーブ系のトップノーズを飛ばすために、私は 97 年物のアムルーズを15時間前に抜栓し、口取りを行なった。その結果 3m離れた場所からでも、ゴージャスなプラムのジャムとブラックチェリーのアロマ が確認できた。グラスをステアーする事でエキゾチックなアジアンな香料、かすかなコーヒー、ミントなどが楽しめ、しなやかで豊満なフルーツは今からでも飲める状態にある。しかし前者と比べ、香りの品格と将来性の点で劣る。 ※95年物のドメーヌ・シェゾーのシャルムは、思いの他薄い色合いで、オレンジがかかっかたルビー色をしているが、太いレッグスを伴ない強い粘稠性を持ったワインである。総体的にエレガントな印象で、花の香りにミント、クローブが見つけられ、それに続く強いミネラルと鉄分を感じる風味が特徴的である。ひきしまった酸とスタイリッシュなフルーツが品の良い香気を帯びて、シャルムの畑のテロアールを具現している。今が飲み頃の入り口と考えられる。 グラン・クリュ ミュジニーの畑は北からレ・ミュジニー、レ・プティ・ミュジニー、ラ・コンブ・ドルヴォーの3つの区画に分かれている。 ※ジャック・プリュールのミュジニーはミュジニーの一番南端で、等高線で結ぶと一番低い土地のラ・コンブ・ドルヴォーの畑で産する。95年物はブラウンがかったルビー色で、熟成感を伴うブケが、信じがたい程膨大にグラスの中から立ち昇る。それは、シナモン・白コショウ・グローブなどのアジアンな香料のトップに、スー・ボア、シャンピニオン、プラムのドライ・フルーツなどが複雑にからみ合っている。味わいはしなやかで精妙なバランスがあり、ひきしまった酸が、みずみずしいフルーツに仕上げているものの、フィニッシュは濃密なエキストラクトが忘れがたい印象を残している。今飲むのであればこのミュジニーを一番推すであろう。 ※ジャック・フレデリック・ミュニレはミュジニー第二の所有者であり、同時にボンヌ・マール、アムルーズを合わせ持つ数少ないドメーヌの一つである。(他はヴォギュエとルーミエ) 地所は、レ・ミュジニーの南端にあり、ルイ・シャドーの地所と接している。今回のロットは残念な事に高いアルコールと老酒の古酒の様な不思議なトップ・ノーズがミュージニー本来の品格のあるアロマを消し去っている。しかし味わいはコンセントレーションが強く、スケール感のある厳格なピノ・ノワールで正体が解るまで5年以上の年数が必要となるであろう。 ※オレンジがかった極めて薄いルビーのルイ・ラトゥールの72年物は、完全に熟成しており、精気をわずかに残した状態の数年前に飲み切るべきだったのか?しかし気持ちのよいトリュフ、シャンピニオン、モカなどにプラムのドライフルーツのブケがふんだんに楽しめる。フィニッシュは甘く官能的な仕上がりをみせ、リキュールの様な後味が心地よい。 シャンボール・ジュミニーの代表的な造り手は、コント・ド・ヴォギュエとジョルジュ・ルーミエと誰もが口をそろえて言うであろう。又、現代のブルゴーニュのトップ・ドメーヌ10傑に両者が選ばれる事に疑う余地はない。 ※コント・ド・ヴォギュエはミュジニー第一の所有者で全面積の66.5% (約7.2ha)にも及ぶ。ヴォギュエの93年物のミュジニーVVは「おいしいですか?」と聞かれれば、未だに閉じた状態で決して単純においしいとは言い切れない代物である。しかし、"これだけは絶対に手放したくない"と思う、ワインコレクターの琴線にふれるワインである。最も濃密なルビーの このワインは、コーヒー、煮詰めた砂糖などのトップ・ノーズにグローブのニュアンスとかすかなスミレの花に甘いチェリーのコンフィの香りが、延々とただよう。依然として厳格なタンニンと切れ上がった酸が存在するが、総体的なバランスのよいフルーツで、格違いの品位がそなわっている。10年後にもう一度試してみたい一本である。 ※87年物のヴォギュエのミュジニーVVは オレンジがかっており、トップノーズに気になる老酒、松ヤニなどの香りが見つかられるがグラスの中心で程なく消える。甘いフルーツケーキの様な香りにプラムのドライフルーツとかすかなミント、グローブが涼しげな印象を与える。よく熟成したエレガントなフルーツは、精妙な味わいを持ち、豪勢なエキストラクトがフィニッシュのリキュールの様な強さを演出している。 ※ジョルジュ・ルーミエは ル・ミュジニーの北端で、最も石灰岩質の多い地所を所有しているが、その面積は0.1haにも満たない。 しかし そのミュジニーは高い品性を持った、豪華絢爛たる香りにつつまれた霊妙とも言えるワインで、世界のワイン・コレクターの垂涎の的となっている。87年物のルーミエのミュジニーはてり輝く美しいルビー色で、オレンジのエッジはヴォギュエの物より赤味が多い。気持ちのよい花の香りのトップ・ノーズにスー・ボア、トリュフがからみ合い、エキゾチックで官能的な印象が残る。グラスをステアーすると あふれんばかりのプラムのジャムとフルーツの果実香が鼻を刺激し、グローブ、ミントのニュアンスが清涼感を誘う。甘いスタイリッシュなフルーツでひきしまった酸のバランスはヴォギュエの物より舌触りが刺激的で余韻もわずかに短く思われた。 |
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