「運動療法について」(1)
院長 熊谷 利信

  皆さん、その後生活習慣の改善はうまくいってますでしょうか。
前回は紙面の関係で運動療法についてあまり説明できませんでした
ので、今回はもう少し詳しく述べたいと思います。

 まず、運動する事の意義についてですが、以下の事が挙げられて
おります。

1.エネルギーの消費を増やし、食事療法とともに行
  なうことで、エネルギーの摂取と消費のバランスをよ
  くします。

2.インスリン(膵臓から分泌されたものと、外から
  注射で投与されたもの)の働きをよくします。

3.食事療法により体重が減少するときに起こる筋萎
  縮(筋肉のやせ)を防ぎ筋力を保ちます。

4.運動する事により爽快感、活動気分などが得られ、
  日常生活の質を高める効果も期待できます。

5.糖尿病だけでなく、高血圧や高脂血症の改善に有
  効です。

6.心肺機能をよくします。

では、実際の運動のしかたですが、「いつでも、どこでも、一人で
も」できる運動…歩行運動が最適といわれております。しかし、運
動を制限した方がよい場合もありますので一度主治医と相談してみ
て下さい。

 運動をする時間帯ですが、なるべく食後1時間程度経過した後に
行なうようにして下さい。
 運動の強さとしましては、脈拍数を100〜120回/分以内に
とどめるのがよく、運動中に「楽である」または「ややきつい」と
感じる強さがよいとされています。運動を始める前には準備運動を、
やめる時には整理運動をして下さい。(ウォームアップとクールダ
ウンです)

 運動の時間ですが、歩行運動では、1回30分、1日2回、頻度は少
なくとも週3回以上、できれば毎日行なうことが望ましいとされま
すが、無理をしないことが大切です。最初は軽い運動を短時間から
始めて下さい。1週間程度の間隔で少しずつ長くして1日1回30分間
できるようになったら、毎日することとし、2〜3ケ月で1日2回に増
やせば理想的とされております。 運動で消費されるエネルギーは
それほど多くありませんので、運動したからといっていくら食べて
もいい、というものではありません。食事療法もきちんと守ること
が大切です。




「運動療法について」(2)
院長 熊谷 利信

  今回も、前回に引き続き運動療法についてもう少し説明を加えた
いと思います。
 皆さんの中には、仕事で忙しくて、毎日運動のための時間がとれ
ない方もいらっしゃると思いますが、ちょっとした工夫で運動はで
きるものなのです。

 たとえば、もし通勤にバスを利用しているなら、いつものバス停
の一つ手前で降りて少しでも歩くようにする。エレベーターやエス
カレーターがあっても出来るだけ階段を使う。昼食を外食で摂って
いるようでしたら、少し離れたお店にする。(もちろん歩いて下さ
い。)買い物をする場合、可能なら車を使わずに歩いて行く。目的
の場所が近くでしたら、少し遠回りして歩いて行く。などなど、御
自分でいろいろ工夫してみて下さい。

 そして、折角色々努力するわけですからどれだけ運動したか「運
動量測定機器」でチェックしてみてはいかがでしょうか。「運動量
測定機器」と書くと大変な機械のように思われますが簡単に言えば
万歩計やカロリーカウンターなどです。それらを身につけて毎日記
録してみるといいと思います。それが運動を継続する励みになるよ
うです。

 また、中には様々な理由で、あまり歩く事が出来ない方もいらっ
しゃると思いますが、その場合には両腕を中心にできるだけ多くの
筋肉を使った上半身の運動をしてみてはいかがでしょうか。腕の運
動を行う場合、ダンベルなどの重りを使って行えば、運動の効率も
良くなりますから適当な重さのものを使ってみるといいと思います。
さらに膝などにあまり負担をかけない運動として、椅子に座った姿
勢で、下肢の上げ下ろしを繰り返したり、下肢の屈伸運動なども良
いと思います。

 そして、重要なポイントは、肥満の改善などには、いくら運動療
法をきちんとしても、食事療法を守らなければあまり効果がないと
いうこと。逆に食事療法だけでもあまり効果がないということ。つ
まり、食事療法と運動療法をきちんと組み合わせた場合により効果
が期待できるということを忘れないで頑張ってみて下さい。