『糖尿病発症阻止への
     アプローチ』
院長  熊谷 利信


 五月十七日から十九日まで、東京国際フォーラムにおいて日本
糖尿病学会が開催されました。多くの研究発表やシンポジウムな
どがありましたが、今回は「糖尿病発症阻止へのアプローチ」と
いう興味のあるシンポジウムがありましたので、簡単に説明した
いと思います。

 二型糖尿病は、日本だけではなく世界中でその増加が問題にな
ってきております。ですから、どのようにしたら糖尿病の発症を
防ぐことができるかという点にも関心が集まってきております。

 以前、くまちゃん健康ニュースでも糖尿病の境界型について説
明しましたが、糖尿病へ進展する可能性が高い状態である訳です。

 今回、学会で発表になった二つの海外の研究は境界型の方々に
ある薬を使って糖尿病への進展を遅らせることができるかどうか、
というものでした。この研究の他にも糖尿病の治療薬を使った同
様の研究がなされているわけですが、今回の研究ではアカルボー
スという薬が注目されました。(この薬も糖尿病の治療薬として
よく使われております。)どのくらいの期間に何パーセントなど
といった細かいことは省略しますが、結論としましてはこの薬は
境界型の方々において糖尿病への進展を遅らせることができる、
というものでした。

 しかし、完全に発病を阻止できるわけでもありませんし、現在
のところアカルボースには境界型には保険適応もありません。ま
た、糖尿病であっても全ての患者さんにこの薬が必要なわけでも
ありません。もちろん、今後の研究の成果を待たなければなりま
せんが、現時点では、運動や食事といった生活習慣の改善を心掛
けることが重要である、という点については変わりはないようで
す。将来、夢のような薬が出てくるかもしれませんが、それを待
っていてもしかたがありません。とにかく今できる努力をすると
いうことが大切なのだと思います。