『糖尿病の食事療法について』
院長 熊谷利信


 糖尿病の治療において食事療法が大切だ、という事は皆さんも分
かっている事だと思いますが、なかなかうまく実行できないでいる
方も多いかと思います。特に、肥満の方で外来に来る度に体重を減
らしましょうと言われるので、もううんざりという方もいらっしゃ
るかと思います。しかし、糖尿病にとって最も効果的な治療法であ
り、他の治療法の手助けにもなりますのできちんと理解し、実行し
て頂きたいものです。

 では、どうして糖尿病に食事療法が必要なのでしょうか。まず、
食事を摂ると体内にブドウ糖が入ります。しかし、糖尿病ではイン
スリンの分泌や働きが悪いため、そのブドウ糖をうまく利用できま
せん。そのため、ブドウ糖が血中にたまるわけです。これが血糖値
が高いという事です。そこで、食事によって体内に入るブドウ糖の
量を制限する必要があるのです。また、食事療法によりインスリン
の需要を節約し、インスリン感受性やインスリン分泌の改善をはか
る事ができ、さらに、糖尿病の合併症もしくはその危険因子(高血
圧、肥満、動脈硬化など)を減らす事ができるのです。

 食事療法の基本は、「適正なエネルギー量」「栄養のバランス」
「規則的な食事」です。
 最初の、「 適正なエネルギー量」ですが、そのためには標準体重
を求めます。多くの人で二十歳前後の体重とほぼ等しいと言われて
おります。目標体重を設定したら、日常生活活動強度に基づき、総
エネルギー量を決めます。通常の生活活動強度では、目標体重一キ
ログラム当り男性で三十〜三十五カロリー、女性で二十〜三十カロ
リーとなります。

 次に「栄養のバランス」ですが身体に必要な栄養素をバランスよ
く摂り、また食物繊維(コンニャク、きのこ、野菜など)をたくさ
ん摂るようにしましょう。食物繊維は食後の血糖上昇を抑える作用
があり、また食事の嵩を増やす事ができます。

 最後に「規則的な食事」ですが決められたエネルギー量を一日三
食で、均等に食べる事が大切です。「まとめ食い」は避けてくださ
い。更に、香辛料や酢、レモン等を使って味をひきたてたり、おか
ずは少量にして、品数を増やすなどの工夫も必要でしょう。また、
「早食い」は満腹感が得られにくいようです。ゆっくりとよく噛ん
で食べるようにしましょう。

 以上の事に注意してもう一度「糖尿病食事療法のための食品交換
表」を利用して正しい食事療法を実践するように心掛けて下さい