『大腸癌の話』
熊坂内科医院 理事長
熊坂義裕


 近年、大腸ガンが著しく増えています。いずれ羅患数において現
在第一位の胃ガンを抜くのは、時間の問題といわれています。この
原因として、食事の欧米化、すなわち高脂肪、高カロリーの食事、
そして食物繊維の摂取量の減少があげられます。この事は非常に有
名ですので、皆さんも気をつけているとは思いますが、食生活を変
える事はなかなか難しいので、飽食の国日本では今後も大腸ガンが
増え続けるのは確実な状況です。

 大腸ガンにかかる割合は男女共ほぼ同じです。六十歳代が最も多
く、次に五十歳代、七十歳代と続きます。症状で一番多いのは、便
に血が着いたり、排便の後に出血する、いわゆる血便といわれるも
のです。この為、集団検診では便に血が混じっていないかどうかを
まず検査します。便潜血検査といわれるものですが、陽性者の約二
〜三%に大腸ガンが見つかっています。確実な診断は、注腸バリウ
ムX線検査と内視鏡検査を行ないます。余談ですが、大腸の内視鏡
検査を胃カメラを応用して世界で初めて成功したのは、私の母校弘
前大学のグループです。尚、大腸にポリープが発見され「ガンにな
る」と慌てる人がよくいますがポリープの性質が腺腫(大腸粘膜の
上皮細胞から発生する良性腫瘍)でなければガンになる事はありま
せんし、又、腺腫のすべてがガンになるわけでもありません。

 非常に増えている大腸ガンですが、早い時期に見つけて手術すれ
ば、ほとんど治す事ができます。事実、大腸ガンはかかった人の約
六割が治っています。膵臓ガンや肺ガンが治療成績が悪いのと好対
照です。なぜなら人工肛門になったりして生活は多少不便になった
りしますが、大腸はたとえ全部取ってしまっても、他の臓器と違っ
て普通に生きていけるからです。食生活を改善し、積極的に大腸ガ
ン検診を受ける事をお薦めします。

参考文献・武藤徹一郎著
「大腸がん」ちくま新書