老化と痴呆理事長  熊坂 義裕


 日本は、世界で最も長生きの国となった。本来長寿は祝うべき事
であるが、高齢社会に対する不安は日増しに大きくなっているのも
現実だ。二十数年後は、実に三人に一人が六十五歳以上となる。

 人は歳を重ねると当然ながら体も脳も老化する。特に近年老年期
の痴呆、いわゆる老人ボケの患者が急速に増え、大きな社会問題に
なっている。アルツハイマー病に代表される痴呆は、本人よりも家
族や社会に深刻な影響をもたらしその姿を多くの人が正常な時に見
ているだけに、ある意味ではガン以上に恐れられ、なりたくない病
気の筆頭にあげられている。

 アルツハイマー病は大脳皮質の神経細胞が死滅し、脳が萎縮して
ボケに陥る病気である。
 この様子は、MRIでみるとはっきりわかる。
(左が正常、右がアルツハイマー病の患者、共に七十四歳、岩波新
書『医の現在』から)。

 原因は不明だがアミロイドと呼ばれる物質が脳の中に沈着する事
による細胞障害がもっとも重要なものとされており、予防法や治療
法に対する期待が高まっている。

 脳も使わなければ老化が早くすすむ。脳を元気にするのは外から
の刺激である。刺激は主に目と耳から入る。その意味で、白内障の
手術や補聴器の使用は積極的にすべきだ。もちろん運動も脳を元気
にする。一方、責任のない気ままな生活はボケを早める。アルツハ
イマー病に対しても初期には、これらの刺激をうまく使った治療が
効果があるとの報告も多い。国立長寿医療研究センター長の柳澤信
夫先生は、ボケを防ぐためには、よく見て、よく聞いて、よく考え
て、よく行動する事が大切だと言っている。

今からボケ予防を心がけましょう。