『脳梗塞について』 院長 熊谷 利信


この春には、いろいろありましたので、みなさんも関心がある
病気だと思います。
まず、脳血管障害というのが大きな分類としてあります。その
中に、脳梗塞、高血圧性脳出血、くも膜下出血、硬膜下血腫など
があるのです。脳血管障害は多くの場合、意識障害や脳の局所症
状が急激に発症しますが、このような場合には脳卒中とよばれま
す。脳血管障害の危険因子とよばれているものにはいろいろあり
ますが、高血圧は脳梗塞、脳出血いずれに対しても危険です。ま
た、糖尿病、高脂血症も脳梗塞の危険因子です。

さらに、心臓弁膜症、不整脈(とくに心房細動)、心筋梗塞な
どは脳梗塞の中の脳塞栓を起こす危険が大きいといわれています。
今回の話題の脳梗塞ですが、脳血管の血流障害により、脳実質が
壊死をきたした状態をいいます。原因としてもっとも重要なもの
は、動脈硬化を伴った「脳血栓」と、心臓に上で述べたような病
気がありますと、心臓の中に血栓ができることがありますが、そ
れがはがれて血管の中を流れて行き、脳の血管をふさいでしまう
ことによって生じる「脳塞栓」です。

今回、ニュース等で、出血性梗塞という言葉を聞いた方も多い
と思いますが、脳梗塞で、梗塞巣内に出血を伴う場合、出血性梗
塞とよばれます。発生機序ですが、血栓や塞栓が融解した場合、
障害された血管の壁から血液がもれるため、という考え方がある
ようです。症状ですが、脳血管の支配領域というのは解剖学的に
定まっており、障害された血管によってそれぞれ特徴ある症状が
出てきます。血管では、内頸動脈、中大脳動脈、前大脳動脈、後
大脳動脈、椎骨動脈などがありますが、今回有名になったのが、
中大脳動脈です。

中大脳動脈起始部の閉塞では、普通では大梗塞をおこし、片麻
痺、半身の感覚障害を呈します。また、優位半球の障害では失語
症もみられます。さらに、病変が大きく脳浮腫が高度になります
と、意識障害も出てきます。また、中大脳動脈は脳塞栓が起こり
やすい部位でもあります。

このように、脳梗塞はやはり恐い病気です。出来ればなりたく
ない、と思ってはいても、なかなか危険因子を改善できないでい
る方も多いかと思います。今回のことを契機に、もう一度生活習
慣の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか