「基礎代謝について」
院長 熊谷 利信

 今回は、肥満との関連で「基礎代謝」について述べたいと思いま
す。基礎代謝とは、安静空腹時に必要なエネルギーの量のことをい
います。これだけでは肥満とどう関係があるの?ということになり
ますので、もう少し詳しく説明します。

 人間は運動したり日常の生活活動をすることによりエネルギーを
消費します。しかし、安静にしていても体温を維持したり、呼吸運
動や心臓の拍動にエネルギーが必要ですし、脳や肝臓、腎臓といっ
た臓器も休むことなく働いており、エネルギーを消費するのです。
個人差もありますが、日常生活で消費するエネルギーの約60〜70%
をこの基礎代謝が占めています。
ここで注目しなければならない点があります。
 それは、この基礎代謝のエネルギー量が年齢とともに低下してい
く、ということです。
時々、健康診断の表をながめていますと、毎年のように体重が増え
てきている方がおります。また、中年になってから少しずつ体重が
増えてきたという人も多いかと思います。

 明らかに、食べ過ぎ、飲み過ぎです、と自覚している人はともか
く、若いときと同じように働き、同じように食べていても、基礎代
謝が低下する分、相対的に食べ過ぎの状態となり、太ってしまう可
能性があるのです。

実際の数字で示しますと、平均的な体格の人の場合、20代の男性
の基礎代謝量は1540kcal/日ですが、50代では1391kcal/日、80代で
は1090kcal/日まで低下します。
同様に女性の場合、20代で1209kcal/日、50代で1125kcal/日、80代
で922kcal/日といわれております。

さらに、年齢とともに生活活動の強度も低下していくことが予想
されます。消費しているエネルギー以上に摂取しているエネルギー
が多ければ「少ししか食べていないのに」と思っていても、実際に
は太ってしまいます。

また、油っぽいものはほとんど食べないのに太るという方もいま
すが、「栄養素の相互変換」という仕組みがあるのです。
ですから、あまり脂肪を摂らなくても糖質の過剰摂取により糖質か
ら脂肪への変換が起きてしまい脂肪沈着は起こるのです。

食糧難の地域で肥満の方が多いということはありません。
肥満の方、あるいは少しでも体重の増加が気になる方は食べ過ぎや
運動不足がないか、もう一度生活習慣の改善について考えてみては
いかがでしょうか。