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最近、活性酸素という言葉を耳にする機会が多くなったと思いま
せんか。 実は、今、活性酸素は、我々が臨床的に病気と判断して
いる病態のほとんどに関与していることがわかり、病気の新しい治
療法や予防法が開発される為にも、とても重要な研究分野となって
きています。
私も大学の研究室にいた時に、糖尿病と活性酸素の関係の研究をし
ており、私の博士論文のテーマでもあるので、研究生活を離れたあとも、
ずっと活性酸素には興味をいだいてきました。
今回から数回にわたって活性酸素と病気の話をしてみたいと思い
ます。
まず活性酸素について簡単に説明します。人間も好気性生物であ
る以上酸素なしには生きられません。酸素はあらゆる元素の中で最
もエネルギー効率の高い元素であり、この酸素を利用し生成するこ
とによって生きているのです。そしてこの酸素を消費する過程で活
性酸素はたえず生成されます。 活性酸素にはスーパーオキサイド
(O2・-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(HO・)、一重項酸素
(1O2)の四種があります。これら活性酸素は、強力な毒性を有してお
りそれぞれ単独であるいは共同で生体の蛋白、脂質、核酸、酵素な
どを酸化することによって攻撃し、さまざまな障害をひきおこす原
因となっています。逆にこの毒性を利用もしています。好中球など
の食細胞が細菌を殺す強力な武器として、又、癌細胞を殺すのにも
利用しています。
一方、生体にはこれら活性酸素による酸化的障害から身を護る機
構が種々備わっていることもわかってきました。スーパーオキサイ
ドを消去するスーパーオキサイドジスムターゼ (S0D)という酵素が
1969年に発見されたことがきっかけとなり、この絶妙なバラン
スの上に私たちの生命が成立っていることもわかりました。すなわ
ち、このバランスのくずれがさまざまな病気を発生させるらしいと
いうことがわかってきたのです。(次回につづく)
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