「インフルエンザ予防接種」
院長  熊谷 利信

 今年もそろそろ、インフルエンザが気になる季節になってきまし
た。

 既に、ご存じの方も多いかと思いますが今年の10月31日、予防接
種法が改正され、11月7日公布、施行されました。
 今回の改正では、65歳以上の高齢者に対するインフルエンザ予防
接種を一部公費負担とすることになりました。

 我が国では集団感染予防のため1962年から学童を対象としてイン
フルエンザワクチンの集団接種が実施されておりました。しかし、
開発初期のワクチンによる脳症が問題となり、また集団防衛効果も
証明できなかった為、ワクチン接種率は急激に減少しました。

そして、平成6年の予防接種法改正の際には任意接種となってしま
いました。
 ところが、3年前の大流行の時、1330人の方々が亡くなり、その
うち1137人が高齢者の方々でした。つまり、高齢者にとって、イン
フルエンザは肺炎を併発したり、死亡したりすることもある大変危
険な病気なのです。

 そこで、高齢者に対するインフルエンザ対策が必要となった訳で
す。最近の研究ではインフルエンザ予防接種は、65歳以上の高齢者
に対しては一回で十分との結果が報告されております。また発病予
防にももちろん効果があるのですが、もし発症しても重症化防止
に有効であることが明らかになってきております。

 ということで、今回の改正になったわけですが、任意接種から勧
奨接種に変わりました。 実際には、ワクチンを一回皮下注射しま
す。
ワクチン接種は一般的には10月下旬から12月中旬頃に行なわれる
のが望ましいとされております。接種されたワクチンが十分な効
果を発揮できる期間は接種後約二週間から約五ヶ月間と言われてお
ります。また、ワクチンは毎年流行が予想される株が選定されて作
られますので、ワクチン接種は毎年行なう必要があるのです。

 しかし、もしインフルエンザにかかったかなと思ったら、早めに
受診してください。迅速診断できる試薬もありますし、発症二日以
内なら抗インフルエンザウイルス剤も効果が期待できるからです。