「インフルエンザについて」
院長 熊谷利信

 今年もインフルエンザの季節が近づいてきました。
インフルエンザは普通の風邪と違って、くしゃみ、鼻汁、のどの痛
み、咳などの症状に加えて三九度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉
痛など全身の症状が強いのが特徴で、さらに気管支炎や肺炎などを
合併しやすく、特に高齢者や基礎疾患を有する方は重症化しやすい
といわれております。
さらに一旦流行すると、短期間に小児から高齢者までたくさんの
人が罹ってしまい、特に六五歳以上の高齢者での死亡率が普段より
高くなるといわれております。

 歴史的にみましても、時々大流行を起こし、1918年のスペイン風
邪、1947年のイタリア風邪、1957年のアジア風邪、1968年の香港風
邪、1977年のソ連風邪などが挙げられます。世界中で多くの死者を
出したことは皆さんもご存じだと思います。

 それに対してインフルエンザワクチンが開発され、我が国でも集
団防衛のため、1962年から学童を対象として集団接種が実施されて
おりました。
 しかし、開発初期のワクチンによる脳症が問題となり、さらに、
集団防衛効果も証明できなかったこともあり、ワクチン接種率は急
激に低下し、平成六年の予防接種法改正の際、任意接種となりまし
た。しかも、「インフルエンザワクチンは効果がないうえ、危険で
ある」といった誤解もあったようで、実際にはほとんど接種されな
い状況となってしまいました。

 そうこうしているうちにインフルエンザによる死亡数の増加が問
題となり、特に、六五歳以上の高齢者での死亡率が高くなるという
ことで、ワクチン接種に対する関心が高まってまいりました。

 また、欧米諸国では高齢者に対してワクチン接種が勧められてお
り、公的補助のある国も多いようです。
もともと欧米諸国では普通の場合、一回接種が行なわれております
が、今回、日本の研究でも六五歳以上の高齢者に対しては、接種回
数は一回で十分との結果が報告されております。
 しかし、インフルエンザワクチンを作るためには孵化鶏卵が必要
であり、急な大量生産はできないといわれております。急に需要が
増えたため、十分な供給とはいえないようです。

 最後に予防ですが、基本は予防接種で、流行してきたら人混みは
避け、十分な栄養と休養をとり、室内の乾燥に気を付け、外出時の
マスクや帰宅後のうがいをすることなどが勧められております。