カッターの刃を換えた

 いろんなものを切ってきたから

切れ味が悪くなってきていた

まぁ、それでも当然ながら

鉄よりやわらかいものしか

切らないから問題なかった

 

今回のターゲットも例にもれず

鉄よりやわらかい

でも鉄よりは重い

とは言え重いかどうかは

人それぞれだろう

正直、自分もわからない

 

実はコイツに挑むのは二度目だ

前回は切れないカッターであったし

初めてだったのもあり

表面をわずかに傷つけただけだった

それでも、何か達成感みたいなものがあった

自己満足って言葉で片付く範囲

でも今回は違う

絶対勝ってやる

 

右手でカッターを持つ

ターゲットは動かない

心なしか笑って見える

『どうせ切れまい』

こしゃくなヤツだ

 

ターゲットは動かない

右手も動かない

 

切っていいんだろうか?

何かが変わる?

逃げられる?

忘れられる?

いろいろ浮かんでは消える

言葉

出来事

 

ターゲットは動かない

はずなのに、揺らいだ

目標が定まらない

悔しさ、怒り、哀しさ

こみ上げる何か

 

誰かの言葉

「自分が大好きでゴメン!」

 

そうか、好きなんだ

オレも自分が好きなんだ

そうなんだ?

 

じゃぁ自分のことが

アイツ等より嫌いになるまで

この勝負はお預けにしよう

 

右手が動いた

机にカッターを置いた

今回も負けた

左手から安堵のため息が出た

そんな気がした