さあ、せっかく出来た、このゼーゲル式を、
とことん使いこなしてやりましょう。

 まず、方眼紙を買って来て、
SiO2を横の座標軸に、Al2O3を縦の座標軸に取ります。
横軸を「1~7」位、縦軸を「0.1~1.0」位で
紙幅一杯ぐらいになるように(なるべく大きく)目盛ります。
 (SiO2の目盛りがAl2O3の目盛りより十倍になるようにする)

次に、原点から (4 , 0.5) に向かって半直線を引きます。
私の作った方眼紙を、プリントアウトして使ってもOKです。)



 三原則

1. この「斜めの直線」から、あまり離れないような調合が、
   うまく焼ける釉薬なのです。

2. 原点から遠くなると、釉は強くなります。近いと弱くなります。
   通常、SiO2が2~7 位、Al2O3が0.2~0.9位の範囲が
   使える釉薬となります。

3. (1.6 , 0.2)より原点側だと、まず使えません。

    以上が三原則です。


それでは前ページの土灰釉をプロットしてみましょう。

Al2O3が0.40759、SiO2が2.3804ですから、
(2.4,0.41)をプロットしましょう。

それでは次に長石:土灰8:2を計算させてみましょう。
Al2O3が0.535位、SiO2が3.18位になったでしょう。
そこで(3.2,0.54)をプロットします。

もうひとつ長石:土灰6:4もやってみましょう。
Al2O3が0.318位、SiO2が1.82位になりましたね。
(1.8,0.32)をプロットします。


方眼プロット

斜めの線に沿って、きれいにならびましたね。
つまり、三つとも、どうやら使えそうだ。
そして、8:2は強め、6:4は弱めであることが予想されます。

実験してみればわかりますが、本当に上記のようになります。
       (ゼーゲル先生は偉大だ!!)
これから言えることは、[土灰+長石]の釉は
調合が多少ずれても間違いなく焼ける、基本的に良い釉だ、と言うことです。
ですから、昔から多くの人に使われてきたわけなんですね。


釉薬を開発するとき、表計算ソフトと、このグラフを使って
自分の使いたい原料から調合比を割り出します。
いくつかの調合比の例を、斜めの線に沿って作って行きます。
そしてテストピース(試験板)を何枚か作って焼いてやる。
試験板の焼け具合を見て、また調合比を考え直す。
これを繰り返して目的の調合比に迫っていく、、、、

こんな風に、上手に使いこなしてやれば、効率的に釉薬の開発が出来ます。



最後に、大事な事を、ちょっと付け加えておきましょう。

 1. ゼーゲル式は、厳密に言うと「アルカリ分の中身」が同じである時にだけ
   上の3原則が成り立ちます。     
   
   全く違う原料の釉薬が、元の釉と近い場所にプロットが現れたからと言って
   それが元の種類の釉と同じ温度で使えるとは限りません。
   例えば、石灰釉で石灰(Ca)を、マグネサイトやタルク(Mg)で置き換えて、
   同じ所にプロットが現れるように調節した場合
   もとの石灰釉より大幅に耐火度が上がります。

   要するに、原料が変われば、別の方眼紙で考える必要がある、と言うわけです。
   (もちろん同じ原料でも、調合比が変われば
    当然、アルカリ分中の成分比も変わってきますが
    同じ原料で、長石や珪石の増減で耐火度を調整する場合は
    実用上、あまり気にしなくても OK。)

 2. 原点に近いと、結晶性になる傾向があります。
   斜めの線から上方に離れて行くと、マットになる傾向があります。
   下方に離れて行くと、乳濁になる傾向があります。
   (あくまでも目安。これはもう、実験するしかありません。)   
   
 3. ゼーゲル式は、大変大雑把な議論ですから、
   有効数字2桁位で考えて下さい。
   あまり細かい数字は無意味です。
   しかし、計算途中での四捨五入は厳禁。
   非常に小さい数で割る場合もあるので、誤差が拡大する恐れがあります。
   (表計算ソフトでやるなら、わざわざ四捨五入する人もいませんよね。)

 4. ゼーゲル式は
  本焼高火度陶磁器釉を扱うとき、最も当てはまります。
  上絵具、低火度陶器釉、タイル釉等を扱うときは
  アルカリ分の中身が大きく効いてきたり、顔料の作用が無視出来なくなる、等々
  難しい問題が発生します。
  日本伝統の陶磁器釉(高火度釉です)が一番あてはまりやすいのですから、
  日本の陶芸家は
     釉調合にゼーゲル式を使わない手はないですぞ!!!



もっと、理論的な説明は、
宮川愛太郎師、加藤悦三師、素木洋一師、高嶋広夫師、etc.の
立派な本がありますからぜひぜひ見て下さい。
又、大西政太郎師は化学式を一切使わずに、しかもゼーゲル式の意味を
しっかり押さえた、すばらしい本を出版されています。これも又、見事なことです。

ま、とにかくとりあえず、遊んでみて下さい。

また、本稿には誤りもあると思います。

疑問な箇所が、ございましたら、ぜひ、ご連絡ください。


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