中江兆民

中江兆民
(兆民は写真が大嫌いだったので、これは非常に貴重な映像です。)

中江兆民は面白い。
「三酔人経綸問答」(さんすいじん けいりん もんどう)で有名です。
経綸って、自転車競争ではありません。念のため。
政治経済っていう意味かな?

筑摩書房 世界ノンフィクション全集 第2巻
岩崎 祖堂 著 「中江兆民奇行談」、これ、抱腹絶倒。
実は、この巻にインフェルトの「神々のめでし人」がある為買ったのだが、
兆民先生は許してくれるでしょう。
(しかも、盛岡福祉バンク「古本コーナー」だったりする (^_^;) )
(岩崎 祖堂さんの祖は「行にんべん」なのですが字が無いので、これにて失礼致します)

内容の紹介は、、、小見出しの羅列で想像が付くと思われますので、、、

演壇に股引と印ばんてんのいでたち、 兆民と花嫁、 親友の 死去と香典
牛肉店楼上に小便のいたずら、 子弟奇縁の瘤、 よく窮を助く
断わりと廃止の標札、 墓所に行くから失礼する
益田君、ぼくにもキンタマがあるぜ、 兆民と中村のつかみ合い
金時計と金煙管、 横山の議員競争と兆民の書面、 陰嚢とこっけい、 
兆民と存娼論、 一言の挨拶なくして居間に通ず 
栗原亮一に放屁をまいらす、 当選祝いの来訪者に兆民の大気炎
議会開設と議員の当選、 豆食い書記官の評、 兆民と金玉均
空前絶後の論説、 兆民元老連を罵倒す、 兆民とその孝道
主義綱領は兆民の発議、 緋ラシャの洋服と兆民のかけ回り
金もうけなれば犬殺しでもやる、 後藤伯の葬式と生花
だまされつつ、やってゆくのさ、 天水桶に飛びこむ、 紙屋を開業して失敗す
洋行中の沖と中江、 三味線と越中節、 先見の明に驚く
大政治家と近代の非凡人、 唐人の書と盆栽は大嗜好物
入院中の小山、師の病を苦にす、 門弟師の病床に泣く、 兆民とぬれぎぬ
小山と兆民の性行、 仰寝の一癖、 保安条例に会うて退去を命ぜらる
書斎中のフランス書はまっ黒、 児童の教育は放任主義、
小山のうそつきと兆民の讃辞、 病める小山、病める兆民を見舞う
悪腫はそもそも社会の罰か、 小山の葬式と会葬者の兆民談
兆民とその愛子、 兆民とその夫人、 兆民居士の近什
奇人の中井と奇人の中江、 あれは中江篤介だ、 雨戸の釘づけは来客の予防
兆民、大久保甲東に知らる、 為替にて尻をふく
芸者屋にとびこんで三弦を教わる、 兆民の書と井上梧陰、 徳富蘇峰の兆民評
前には無礼、後ろには最敬礼、 中江と呼ばずして「でいこう」と呼ぶ
参議にはこの中江篤介だ、 兆民は立派な実業家だ
猟官熱の幣を論じて、かえってやりこめられる
なっ葉ばかり食っているものは、そうもゆかぬ
貴公には、俺の住いが悪く見ゆるか、 写真をとっておくほどの人物ではない
やむをえなければ医者になる、 興国の人はみんなまじめだ
無血虫にはいうだけ損だ、 政府の嘱託とフランス語の翻訳
余をなぶるがために国民党をなぶるなかれ、 自由党再興の趣意書は兆民の筆
兆民選挙人を覚醒す、 兆民と新演劇、 兆民と角藤定憲

、、、、、

この際、折角ですから第一章だけ引用して見ましょう


演壇に股引(ももひき)と印ばんてんのいでたち

明治22年のことであったか、
自由民権の主唱者が大阪に会合して、慰労会を開かれたことがある。
当時兆民は大阪東雲(しののめ)新聞にあって、
もっぱら自由民権を鼓吹されておったから、
やはりこの会の一員として席を列したばかりではない、
むしろこの会の主人公というてもよろしいのである。

やがて席が定まり各自はそれぞれ演説することになった。
すると隅におった兆民が、意気揚々と演壇に上がったが、
このとき万場をして一驚せしめたのは先生の風采で、
印ばんてんに腹掛け、紺股引といういでたち、
まったく大工か左官としか見えなかったのである。
聴衆これを見て驚く者もあれば笑う者もある。

喧声(けんせい)しばらく鳴りもやまなかったが、
大工左官の兆民が、
諸君よ、という鶴の一声とともに万場が静粛した。
それから滔々と自由民権の本旨を演説されたのである。

そこでなぜに兆民のいでたちが意表に出たかと問えば、
ここが兆民の兆民たるところで、
自由民権を主張するの手段として、
大工左官のごとき平民もまた
日本国民たる以上は、民権の自由を有するものである、
ということを会得さするために、
おのれがまず大工左官を形どったわけであるそうだが、
どうしても兆民は常人とは思われない。

演壇股引

  
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